小説:拍手用番外編
□ヨウビ-Like weather...
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Extra chapter 4. ヨウビ-Like weather...
・Chapter 8.の後半。映画から帰ってきた後、ジュンスとチャンミンをリビングに残して作業部屋に籠ったユチョン。前半でジュンスに失恋を打ち明けていた彼の心境は…
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あんなに晴れてたのに…
窓を叩く雨に顔をあげて、ピアノを弾きたがる手を休め、立ち上がる。
窓を開けて、冷たい雨風を頬に受けた。
夕焼けの名残でまだ明るい空が、降りそそぐ雨をプラネタリウムのように輝かせている。
天気雨か。
近くにある椅子を引いてきて腰掛け、窓枠に肘をついて、ふぅ、とひとつ息を吐いた。
曖昧な色を湛える空に、彼女の声を思い出す。
透き通るような青さも、曇り空のような重さもなかった、綺麗な声。
ちょうどこんなふうだった…笑っているのか、泣いているのか、わからないような。
その声で容赦なく下した痛みは、それを避ける傘を準備する時間さえおれに与えずに、心の深くに突き刺さったまま。
バカみたい、と言ってほしかったのか。
まだはじまったばかりなんだから、こんなことで言い争うなんてバカみたいだと。
何を言ってほしいのか、わかってたよ。
わかってたから言わなかった。
おれにそれが言えないことを、きみもわかってたんだろう?
きみがすべてだなんて言えない。
おれには大切なものがたくさんあるよ。
その嘘がつけなかったことがおれの心からの愛だった。
きみがそのことに気づいてくれたなら…
結局、お互いに思い悩むことしかできない時間が煩わしくなってしまった。
言い争いも食い違いも最後は有耶無耶に流されて、もう無理だとふたりの眼差しが告げていた。
耐えきれず背中を向けて歩き出したおれに、きみが投げ掛けた最後の一言…
その瞬間を思い出すたびに、今も哀しみが体に満ちる。
がんばってね。
雨は降り続き、時折おれの顔や腕にも当たった。
もうこれ以上流すことのできない、きみを思うだけの綺麗な涙をただ、優しく覆うように。
扱いにくくて不器用なおれを、いつもわかろうとしてくれていた。
あなたの愛は凍ってなんかいない、ちゃんとわたしにほほえんでるよ。ほら…
大切なことに気づかせてくれた時間のなかで、きみへの思いはずっと生きていく。
ただ潤いをなくし、乾いていくだけで。
太陽の熱で暖まった地面に、いくつもの雨粒が吸い込まれていくように。
どうしてそんなに乾いていくの?
昨日の雨水みたいに、明日になればもうなくなるの?
そして地に潜り、もう一度空へ還りたい…
青く深く夜に向かう空が、すこしずつ雨を遠くへ連れていく。
もう終わったものと断ち切っても、後悔はしてないと胸を張って言えるとしても、きみを消すことはできない。
心が気が遠くなりそうな切なさに痺れても…
どうしてそんなに待ち続けるの?
たぶん、言い忘れた一言を言える日まで。いつか笑って、お互いの夢への旅路の途中で、あのときはごめんって言える日まで。
きみもがんばれ。
「ユチョナ、お風呂空いたよぉー!ユチョーン!」
ジュンスのおおきな声がする。
たぶんヘッドフォンをしてても聴こえただろうけど、聴こえないふりをした。
たぶんそのうち業を煮やして、部屋までおれを呼びにくるだろう。
独特の足音と、うんざりするほどおおきな声で。
ねぇジュンス、もうちょっとだけひとりでいたいんだ。
この雨がやんで、光が消えるまで。
まだこの心はぼんやりしてるから…
It has finished,
at 02:30 March 30,2012
With my all thanks for your reading