小説:拍手用番外編

□Hug-ポオン
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Extra chapter 1. Hug-ポオン


・Chapter 1.のまんなかくらいの頃のお話です。まだ自分の気持ちに気づかずにいるジュンス、韓国でのとある夜。

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 ぼくの知らないきみの一日は、どんなふうに過ぎていくんだろう。

 とっくに暖まった布団のなかで、ぼくは寝返りをうった。
 暗闇に慣れた視界には空っぽのベッド。

 チャンミンは今日は学校へ行って、そのまま実家で一晩すごすらしい。明日のスケジュールが昼からなので、午前中は帰ってこないだろう。

 ぼくはモヤモヤと格闘していた。
 さっきからずっと、寝よう寝ようと思ってるのに、寝つくことができずにいる。

 チャンミンはもう寝ただろうか?
 まだ家族と話してるかもしれない。最近のこと、話したいこといっぱいあるだろうね。入りたての新しい世界には、知らなかった秘密がたくさんあるのだ。

 ぼくは起き上がって、額にかかる髪を無造作にかきあげた。
 振り向いて、となりで眠るユノの寝息を確認する。確実に寝ているようなので、音を立てないように慎重に、ベッドから降りた。

 帰らないチャンミンを待っているとなりのベッド。

 きちんと整えられた真っ白なシーツは冷たそうに闇を享受している。
 ぼくの知らないぬくもりを知るチャンミンのベッドにそっと手を伸ばした。

 ひんやりとした、生命力のない物質の無情な感触。それでも、チャンミンの体温の一部になれたようなしあわせを感じられた。

 ふと顔をあげると、カーテンの隙間から満月の光が一筋、床を伝って本棚へと伸びていた。

 青い背表紙が月灯りに映し出される。

 日記だと言ってたのに持っていかなかったのか。なくしたくないものだから実家へも持ってかないなんて、用心しすぎじゃないかね。

 それほど大切なものなのか…そのなかにいったい何を書いてるの?
 家族にも知られたくないような秘密とか…

 ジュンスヒョン。絶対ですよ?

 ドキッ。
 無意識に手帳にかかっていた指が強張る。
 ぼくを呼ぶチャンミンの声を、頭のなかで何回も再生させてみる。

 やめよう。チャンミンのヒョンでいたいなら、秘密は覗くべきじゃないね。
 ぼくはすこし頼りないけど、それでもチャンミンにとっていちばんのヒョンになれたらいいなぁ…と思うわけですよ。

 でも、あの手帳が羨ましいな。
 こんなに大切にしてもらえて、毎日チャンミンにさわられて、きっと誰よりも秘密を分かち合ってるんだろう。

 さっきよりモヤモヤが増したような気がして、溜め息をついた。

 ベッドに戻って布団を被る。
 月の光に慣らされた瞳を深い闇が覆う。
 閉じた瞼の裏で、孤立していく意識のなかで、チャンミンを思う。

 最近はホント、他のことが考えられないくらいに、誰を見ても、どこにいても、チャンミンのことばかり思ってる。

 毎晩チャンミンを包み込むシーツも、無条件で抱き上げて愛でてもらえる子猫も、手帳でさえチャンミンの暖かさを知ってるんだね。
 それがなんだか…今のぼくにはすごく、羨ましい。

 ホントは抱きしめて包み込んでしまいたいんだよ。ぎゅーっと強く、どんな秘密も閉じ込めてしまえるくらいに。
 でもねぇ。ぼくはきみの手帳にはなれないみたいだから。

 チャンミン…チャンミン。チャンミン。

 眠る前にもう一度、ぼくを呼んでくれる声を聴きたいな…

 可愛いぼくの弟。
 しっかり者でがんばり屋のマンネ。

 ぼくが守るよ、他のヒョンより頼りなくたって、誰よりもいつもそばにいて、永遠に…

         It has finished,
    at 04:00 February 15,2012
With my all thanks for your reading

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