小説:ジュンス片想い編
□Miss you
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Chapter 15. Miss you
今日こそ、絶対に捕まえる。
ぼくは張り切っていた。
撮影のため訪れた島の上で、やっとなんの邪魔もなくふたりきりになれる夜がくる。
このチャンスを逃してなるものかと。
約二ヶ月間もぼくを悩ましてきたあの男と、向き合うときがきたのだ。
季節は秋。暑くて忙しい夏を越え、外国語で仕事をこなさなければいけないプレッシャーに堪え、やっと身体的にも精神的にもすこしだけ楽になってきたこの頃。
チャンミンはあれ以来、ぼくを避けている。
キスと涙と謎の言葉を残して立ち去ったあの日から、ずっと。
どうして、と訊く機会さえ与えてくれないままで。
正直言って、意味不明だった。
あの謎の言葉以外、まともな会話もしてくれていないのだ。
ぼくから逃げるようにいつも擦り抜けていってしまう。目も合わさず、ただお決まりの挨拶を交わすだけ。
二ヶ月も経ってるのに!
なんの説明もなくよそよそしい態度を続けるチャンミンに、最初の頃こそ寂しさを覚えたりしたものだけど…
今はそれも通り越して寧ろ逆ギレ状態になりつつある。
なんだよ、それ。
一方的に言いたいこと、しかも意味のわかんないことばっかり言って、それで終わりにしたつもりなの?
ちゃんとしたさよならさえぼくにくれないの?
ぼくはちゃんと覚悟してきたのに。
いつかはフラれる日がくるってわかってたから、どんなにしあわせな日もそれを覚悟してきたのに。
チャンミンがそう決めたなら、そしてぼくに望むなら、すきじゃなくなる努力だってするつもりだった。
メンバーのひとりとして、彼の友人に戻れるように。
終わらない関係があることに、これからもずっと感謝できるように。
それなのに、そんなやりかたで終わらせようって言うの?
明らかに不自然な挨拶を交わすだけの関係になって、それでぼくの何かが変えられると思うの?
こんなのおかしい。
納得いかない。
だから、今日こそは彼を捕まえて、徹底的に話をするつもりだった。
「はい、オッケーでーす。じゃあ一旦休憩入りますねー」
撮影の区切りがつき、お疲れさまでーすと言う声が飛び交うなかで、ぼくは背の高いチャンミンの姿を探した。
すきな人なら後ろ姿でもわかると言うが、ぼくの場合それはそう難しいことではない。
人混みのなかで頭ひとつ出ていれば、それが大概ぼくのすきな人だから。