小説:ジュンス片想い編
□No pain no gain
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Chapter 14. No pain no gain
夢を見ていた。
見ているときは、ああいつもの夢だな、なんて思うのに、起きると毎回どんな夢か覚えていない。
ただ、いつもの夢を見たんだな、という漠然とした感覚だけが残される。
いくらがんばっても思い出せないものは思い出せないので、それ以上特に追求することもない。
ただ、その夢を見ることで、いっしょに住んでいるヒョンたちに迷惑をかけてしまっていることは心苦しかった。
「まったく。壁を壊す気か?」
今日ぼくを起こしにきた勇者はジェジュンだった。
ぼくが起きたのを確認すると、お茶でも淹れるからリビングにおいで、と言ってさっさと捌けていく。
他のヒョンたちは部屋の隅に固まって怖々と遠巻きにぼくを見ている。
なるほどね。いちばん腕っぷしが強くてぼくの逆らえなさそうなジェジュンにこの任務は任せることにしたんですね。
どれだけ怖れられてるんだか…自分が寝てる間にどんな暴れかたをしてるのか知りませんが。
ベッドから降りて部屋を出ようと扉に手をかけたとき、ジュンスと目が合った。
彼の腰に無造作にまわされたユチョンの手に、ピリッとした痛みを覚えて目を逸らす。
扉を閉めて、細く長い溜め息を漏らした。
手が痛い。腕もなんだかズキズキ疼いている。
壁を壊さんばかりに(ジェジュンによれば)叩いていたのだから、それも当たり前だろう。
しかし、この痛みを言い訳に、心に起こった静電気のような感覚を無視することはできない。
それは最近ちょくちょく訪れる、あまり気持ちのいいものではない痛みだった。(痛みが気持ちよかったら病気ですけど)
ジュンスを見ると起こる静電気。
一瞬、わけもなくぼくの気持ちを熱くさせる、めんどくさくて鬱陶しい代物。