小説:ジュンス片想い編
□High time
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Chapter 12. High time
ユチョンが部屋に入ってきた音で、ぼくははっと我に返った。
「チャンミン、コーヒーこれで…」
そのとき、ぼくとジュンスは手を重ねてみつめ合っていた。
ユチョンが言葉を途切れさせたワケに思い至って、思わず不自然に手を放す。
ユチョンが何かを悟ったようにほほえんだので、込み上がる気まずさに逃げ出したくなった。
「…これでよかった?」
「はい…ありがとうございます」
ぼくはユチョンと目を合わせることができなかった。
後ろめたさに顔が熱くなってくる。
今、何を考えていた?
となりに座ったジュンスは、何も話さずただ、ぼくをみつめていた。
綺麗なピンク色に染まった頬、ぼくの視線を受けとめるまっすぐすぎる瞳。
雨の音がすこしずつ聴こえなくなって、いつの間にかそのままふたりでぼんやりみつめ合っていた。
重なった手から、ジュンスの暖かさが伝わってくる。
呼吸や鼓動のリズムも聴こえそうなほど静かで、近かった。
ぼくは、ただ…
何か特別なことを考えていたわけじゃない。
ジュンスが目の前にいて、見慣れた彼のそのなんの新鮮味もないはずの顔が、なんだかだんだん可愛く見えてきて…
自分ならつき合えるだろうか、となんとなく、ホントなんの意味もなくただ、ぼんやり考えた。
何でそんなこと思ったんだろう。
ジュンスのちょっときつく見えるような瞳や、顔のまんなかで違和感なく座り込む鼻、赤く染まるちいさな耳、甘く柔らかそうなくちびる。
それをみつめながら、ユチョンが思うジュンスのすきな人のことを考えてて…
結局彼はジュンスにこたえる気がないのかどうか聞けなかったな、とかいろいろ思いめぐらせて…
ぼくなら、というところに思い至ったのだ。
そのこたえは、勿論ノーだろう。
ジュンスは男だし、当然ぼくも男だし…たぶん、男は愛せないと思う。(男どこか女性も愛したことないからわかりませんけど)
でも、まぁ…頼まれればキスくらいなら………
というところでユチョンが入ってきたのだ。
ホンットに、ホンッッットに、恥ずかしかった。
何が"頼まれれば"なんだか…頼まれることなんてないのに。
ジュンスのすきな人はユチョンだ。それは確信している。
それなら、こんな妄想自分が恥ずかしいだけで、なんの役にも立たないじゃないか。
ジュンスにも、ユチョンにもなんかすごく申し訳ないし…
何よりも、キスなら大丈夫だという判決を下してしまったことが、自分自身に対してとても、とても後ろめたかった。