小説:ジュンス片想い編

□Begin
1ページ/16ページ



Chapter 11. Begin


 彼が目を伏せた瞬間に、涙が滴り落ちるのが見えた。

 ソファに足を乗せて、体操座りをするように体をまるめる姿は、子どもみたいだ。
 さっきまでぼくを一生懸命みつめてきた顔を俯かせて、今はただ静かに泣いている。

 ぼくは彼の背中を撫で、ちいさく震える体を抱きしめて心置きなく泣かせてあげようか、と考えていた。

 この人が堪えられずに泣き出すのを見るのは、二度目だ。
 あのときも最後まで泣くのを我慢してたなぁ。ひとりで抱え込んできた意地みたいなものなんだろうか。

 たぶん、ひとりでいるときも、こんなふうに泣くんだろう。
 普段はあんなに騒がしい人が声を殺して泣く姿は、なんだか意外な感じもする。

 どれほどの時間を、こうしてひとりで堪えてきたんだろう。
 ぼくに見せた涙は、その重みを感じさせるものだった。

 もうひとりで泣かなくてもいいんだよ、と言ってあげられたら、と思う。
 泣きたいときはぼくのそばでこうして泣けばいいから、無理はしないで、と。

 ぼくのヒョンでさえなかったら。
 ぼくがせめてあと一年早く生まれていたら、もっとたくさんの言葉で慰めてあげることもできるのに。

 「ふ、…っぅ」

 とめどなく溢れ出る涙を堪えるように息を吸うと、彼の体がぶるっと震えた。

 ポタポタとシャツに染みをつくっていく涙。
 ぼくは袖口を伸ばして、彼の頬を軽く拭いた。

 白く滑らかな肌は、幾筋も伝う哀しみで冷たくなっていた。

 メンバーをすきになるというのは、どれほどつらいことなんだろう。
 ぼくには想像できないけど、あまりに多い障害があるのはわかる。
 どんなに苦しい思いをしてそれを越えてきたことか…

 それでもしあわせだと言えるこの人の強さを、ぼくは心から尊敬する。
 そんなふうに人を愛せるものなのだろうか。苦しくてもしあわせだと言えるほど誰かをすきになることが、ぼくにもいつかできるだろうか?

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ