小説:ジュンス片想い編
□Begin
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Chapter 11. Begin
彼が目を伏せた瞬間に、涙が滴り落ちるのが見えた。
ソファに足を乗せて、体操座りをするように体をまるめる姿は、子どもみたいだ。
さっきまでぼくを一生懸命みつめてきた顔を俯かせて、今はただ静かに泣いている。
ぼくは彼の背中を撫で、ちいさく震える体を抱きしめて心置きなく泣かせてあげようか、と考えていた。
この人が堪えられずに泣き出すのを見るのは、二度目だ。
あのときも最後まで泣くのを我慢してたなぁ。ひとりで抱え込んできた意地みたいなものなんだろうか。
たぶん、ひとりでいるときも、こんなふうに泣くんだろう。
普段はあんなに騒がしい人が声を殺して泣く姿は、なんだか意外な感じもする。
どれほどの時間を、こうしてひとりで堪えてきたんだろう。
ぼくに見せた涙は、その重みを感じさせるものだった。
もうひとりで泣かなくてもいいんだよ、と言ってあげられたら、と思う。
泣きたいときはぼくのそばでこうして泣けばいいから、無理はしないで、と。
ぼくのヒョンでさえなかったら。
ぼくがせめてあと一年早く生まれていたら、もっとたくさんの言葉で慰めてあげることもできるのに。
「ふ、…っぅ」
とめどなく溢れ出る涙を堪えるように息を吸うと、彼の体がぶるっと震えた。
ポタポタとシャツに染みをつくっていく涙。
ぼくは袖口を伸ばして、彼の頬を軽く拭いた。
白く滑らかな肌は、幾筋も伝う哀しみで冷たくなっていた。
メンバーをすきになるというのは、どれほどつらいことなんだろう。
ぼくには想像できないけど、あまりに多い障害があるのはわかる。
どんなに苦しい思いをしてそれを越えてきたことか…
それでもしあわせだと言えるこの人の強さを、ぼくは心から尊敬する。
そんなふうに人を愛せるものなのだろうか。苦しくてもしあわせだと言えるほど誰かをすきになることが、ぼくにもいつかできるだろうか?