小説:ジュンス片想い編

□Rising sun
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Chapter 9. Rising sun


 妙な息切れとともに目が覚めた。

 なんか変な夢を見ていたような気がする。哀しい夢…だったのかな、怖い夢?

 ぼくは泣いていた。泣きじゃくるって感じじゃなくて、くちびるを噛んで堪えるような、喉を引き締めてやり過ごすような哀しみ。心が流す涙、誰にも言えない絶望…

 枕元に置いた携帯を開く。
 まだ4時前かぁ…もうひと眠りしよ。朝は何時に起きればいいんだっけ…ま、いっか。きっとユノが起こしてくれる。ジェジュンかもしれない…すくなくともユチョンではないだろうけど…

 チャンミン、どんな夢見てるかな。しあわせな夢だったらいいな…たとえば………

 波の音がする。押しては引いて、寄せては返す、鼓動のような果てしない繰り返し。

 だんだん近づいてきている気がする。打ちつけるその音が強く、激しくなる。
 髪をひたすら乱す荒れた風のなかに雨粒のような潮の飛沫が混じる。

 目を開けるとそこに、チャンミンがいた。

 ぼくの目の前で、嵐のような風に吹かれながら、何を思っているのかわからない表情でぼくを見ている。

 足元には海が広がっていた。ぼくらの立つ高い岩壁に勢いよく押し寄せては引いていく波。
 吹き上がってくる強い風にバランスを失いそうだ。

 ぼくはチャンミンに手を差し伸べた。
 落ちないように。遠くへ飛ばされてしまわないように。

 彼は状況にそぐわない穏やかな笑顔を浮かべて、ぼくの手を取った。

 その瞬間。彼の指とぼくの指がふれ合った瞬間、心に荒波のような愛しさが込み上がる。

 このまま遠くへ拐ってしまえたら…
 誰の目にもふれさせず、ぼくだけのものに…

 それは、水のなかに絵の具を垂らしたときのように、一瞬で心のなかに染み広がって、思考を征服した。

 自分よりおおきくて強い体格であるはずのチャンミンを、思わず引き寄せる。
 ちから任せに抱きしめると、彼の体はぼくの腕のなかにすっぽり収まった。

 こんなにちいさかったっけ?
 こないだ抱きしめてくれたときは、確かにぼくのほうが彼の腕に収まったような気がしたんだけど…

 
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