小説:ジュンス片想い編
□Eternal...
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Chapter 6. Eternal...
冷たい風が背中のほうから吹き抜けて、都会より早く紅葉をはじめた樹木から
黄色い葉が舞い上がった。
冷えるなぁ。でもまだ夏の残り火のような日射しがあるので、暖かさと寒さが絶妙に絡み合って、気持ちがいい。
ぼくとユチョン、そしてジェジュンは、ロケバスから用意されたパイプ椅子に並んで座っていた。五つ並んだ椅子は両端のふたつが空けてある。
ふたりはさっきから絶えずイイ男とは何かという講義を続けていて、そのなかでたびたび引き合いに出されるユノは撮影の真っ最中。
…ちなみにその話のなかにまだぼくの名前は出てきていない。
「お話中失礼。チャンミン見なかった?」
後ろから声がして、三人で一斉に振り返る。いつでもスーツ姿のマネージャーさんが、脇に何かを抱えて立っていた。
「チャンミンは、まだ番じゃないですよね?」
ジェジュンが辿々しい日本語でこたえる。日本での仕事のときは、スタッフさんたちには基本日本語で話すのがぼくたちのルール。マネージャーさんだって韓国語あんまりわかんないしね。
「そうなんだけど、スタッフが上着を渡し忘れちゃったみたいでね。上がってきたからすこし冷えるし」
ぼくはロケバスのほうを見た。チャンミンはトイレにでも行ったんだろうと思ってたけど、そういえば暫く帰ってきてない。
今日はとある有名な山でのロケ。さっきまで撮影してた場所からバスで高いところまで登ってきたので、確かに空気は冷えている。
「わたしたちが、渡しますよ」
ユチョンはそう言ってマネージャーからチャンミンの上着を受け取った。
「ごめんね、じゃあお願い」
マネージャーが去っていくと、ユチョンは預かった上着をぼくの膝の上に置いた。
「はい。チャンミンに持ってってあげて」
「は?」
「あっちのほうに散歩に行くって言ってたから」
ユチョンの指差すほうには遊歩道のようなちいさな道があった。
散歩に行ったのか…全然気づかなかったな。
「や、あの…」
なんでぼくに?正直チャンミンのところに行けるのはうれしいけど、ジェジュンの前でそんな露骨によろこぶわけにはいかない。
どうするべきなのか判断しかねてジェジュンの表情を窺うと、彼は優しいおとなの目で笑った。
「行ってあげな。風邪引いたりしちゃいけないし」
何を考えてるんだろう?自分が行きたいって思わないの?その余裕はどこからくるの?なんか逆に不安になる。
ぼくは立ち上がって、きちんと舗装された山のなかの道へ歩いていった。