小説:ジュンス片想い編
□言葉はいらない
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Chapter 4. 言葉はいらない
ぼくはチャンミンをみつめていた。
笑ったり、考えたりする顔を。話すたびに動くくちびるを、誰かを見る瞳を、髪を、肩を、背中を、足先を。
みつめてもしかたないとわかっていても、みつめていたら危ないとわかっていても、みつめることしかできない。
そうしていることに理由なんて要らなかった。そんな意味のある言葉は要らない。ただ彼のそばにいられるだけでいい。彼がそばにいてくれるだけでいい。
チャンミンが愛しくて、愛しくて、壊れそうだった。
こうなったのは誰のせい?ジェジュンのせい?ユノのせい?ユチョンのせい?
チャンミンのせい?
ぼくにはわからない。
ただチャンミンをみつめるだけで心に満ちてくる思い。
心から、すきだよ………。
それは眩しい夏の朝だった。
日が昇りはじめる頃。まだ早い時間に鳴りはじめた携帯の着信音に、ぼくの安眠は妨げられた。
となりのベッドでユノが飛び起きる。
「ごめん、うるさくして!イェ、ヨボセヨ〜」
逆どなりのベッドからチャンミンが顔を出す。ぼさぼさの髪と気怠そうな瞳、起きたばっかりの可愛い顔。
目が合って、予定より早く起こされたことに同時に顔を顰め、そんなお互いを見て笑い合う。
なんていい朝なんだろう。空気の読めないユノの携帯に感謝。
「えっ、何?いや、今日本だから…そう言ったじゃん?そうだよ、ねぇあのさ…」
ユノは肩で携帯を押さえてしゃべりながらジーンズを履き、ベランダへ出ていく。
窓が閉まったのを見計らって、チャンミンが口を開く。
「いくら友だちの多いユノヒョンとはいえ、あまりに早すぎませんか?」
「ねぇ?韓国の友だちでしょ、別に時差ないもんね。ユチョンなら時々アメリカからとんでもない時間にかかってくるけど」
大変だよねそう思うと。ユチョンはすきな時間に家族に電話することも儘ならないんだもんなぁ。
「やっぱついに、あれですかね?できちゃいましたかね?」
今さらもう一回眠る気はないらしいチャンミンは、起き上がって着替えるためにシャツを脱ぐ。
ぼくは露骨なくらい激しく目を逸らした。
わかってるんだよ、男同士だもんね?チャンミンには別になんでもないことなんだよね、だからこそぼくも気にしたくないんだけど…どうしても…。
「何が?」
「何がってヒョン、他人事ですね。彼女ですよカノジョ」
え?…え?マジで?
「ええっ、ユノヒョンに?!カノジョ?!」
「いえ、わかりませんけどね。そんな感じじゃなかったですか、今の」
そんな感じだったか全然わかりませんでしたけど…そんな感じでした?
ぼくはきみの着替えのことが気になってそれどころじゃないんだよ、チャンミン。
ただのデニムも、無地のポロシャツも、彼が着るとどんな素敵な服より輝く。
痘痕も靨、ってやつだろうか。
「まぁユノヒョンはおとなっぽいし、既にそんな感じだとは思ってましたけど、でもやっぱりこうまざまざと思い知らされるとちょっと焦りますね」
「え?」
「いえ、いいんですジュンスヒョンにはわからなくても。ヒョンもがんばってくださいね」
え?え?え???
なんのこと言ってんだか全然わかんない状態のぼくを置いて、着替え終えたチャンミンはさっさと部屋を出ていった。
ワケわかんないこと言うなよぉ。ちょっとジェジュンに似てきたんじゃないの?