小説:ジュンス片想い編
□Try my love
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Chapter 2. Try my love
ぼくは朝起きなきゃいけない時間より早く起きることは滅多にない。
となりのベッドでチャンミンが本を読んでても、ユノが早起きして腹筋してても、ぼくにはまったく関係ない。寝れるだけ寝かしてくれないとストレス溜まっちゃうしね(アイドルだもん、心の健康管理は大切だよね)。
でも、その日は違った。
ぼくの頭のなかにはある拭い去れない疑惑があって、それがぼくを何度も眠りの淵から引き摺りおろしてくるのだ。
ジェジュンとチャンミンの例のキス事件から、ちょうど一ヶ月が経っていた。あの次の朝チャンミンは、ぼくの勘違いだったのかと思うほど爽やかな顔で起きてきて、ぼくには何も言えなくなってしまった。ホントは訊きたかったんだけど、すごく気になってたんだけど、もしかしてもう気にもしてないかもしれないことを掘り返されたらいやだよね。
チャンミンが知られたくないのなら、ぼくには踏み込めない。チャンミンが忘れようとするなら、ぼくも忘れたほうがいいんだろう。
そしてそれからもチャンミンの態度があまりにもふつうだったので、ぼくたちは軽いアクシデントだったという感じですぐに気にしなくなった。
こんなところもチームワークかな。時間が経つに連れてみんなのリズムがわかってくる。あ、こうしてほしいんだな、とか、今はこうしないほうがいいな、とかね。
それからは別に何事もない。日本デビューもあっていろいろ忙しくて、正直そんなことどうでもよくなってしまっていた。いや、どうでもよくはないんだけど…まぁつまり、大したことじゃなかったと片づけてしまった。
だけど、昨日の夜、ぼくはあることに気づいた。気づいたというか、すっかり忘れてたことを思い出させられてしまった。忘れたままのほうが楽だったよなぁ。まぁすっかり忘れてたっていうのもどうかと思うけど…
「チャンミン」
ジェジュンが、食べ終わった夕食の食器を片づけ終わってソファで本を読んでいたチャンミンに、優しく声をかける。
ぼくとユチョンはそのソファの手前で胡座をかき、ゲームに熱中していた。
ユノはいつもの長風呂中で、音響を楽しみながら熱唱している。
ジェジュンはチャンミンのとなりに座り、何を読んでるの〜と横から覗き込む。
「日本語の本です。簡単なものだっていただいたんですけど、やっぱり難しいですね」
「へぇ〜おれにも教えてよ。読んでみて読んでみて」
チャンミンがジェジュンに見やすいように本を傾けると、ジェジュンはチャンミンの肩に寄りかかるようにして凭れる。
ぼくは視界の端でそれを捉えていた。
そしてまたいつもみたいにモヤモヤが心に立ち込めるのを感じた。わかってるからあんまり見ないようにしたいんだけど、見ないでいるともっと気になっちゃうから…どっちがいいんだろうね。
くっつき合うのは文化だから、しょうがない。ジェジュンは末っ子のチャンミンを可愛がってるんだからしょうがない。確かにチャンミンは可愛いしね。しょうがないしょうがない。
しょうがないんだけど、わかってるんだけど…やっぱりいやだなぁ。
「漢字読めるの、チャンミン?」
「いいえ、まさか!日本の漢字は奥が深くて日本人でも難しいらしいですよ。これは上にふりがながついてるんです」
画面では仲間のユチョンが死にそうになってたけど、ぼくは無視して通りすぎた。
別に後ろのふたりが気になってるわけじゃない。ユチョンは何回助けてもすぐ死ぬから、めんどくさくなっただけ。