美しい名前

□夢の花
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エースがモビーをでて、5日がたった。

あれからマルコとの関係は不思議なことに以前よりよくなった。

マルコがはっきりとみんなの前で振られた!宣言をしてくれたのにも関わらず、相変わらず私とマルコのことを誤解している団員たちもいるけど私はもうあえて否定はしなかった。

人の噂も75日ってね。

…長いわ。

そんな七日目の朝。

私はマルコに誘われて町へいった。

エース同様、マルコも女たちから声をかけられまくる。

「全く…白髭海賊団の隊長たちは女好きが多いんだから」

呆れる私にマルコは笑う。

「エースもそうだよい」

「もーっ!それはききたくない!!」

私がいじけたふりをするとアイスクリームを買ってくれた。

本当にお父さんみたいなんだから笑ってしまう。

マルコはそんな私の心を見透かしたようで

「どうせまたお父さんみたいって思ったんだろよい」とごちる。

「ばれたか」

私たちは笑った。

爽やかな風が吹き抜ける暖かい日だった。

それから頼まれていた買い物を済ませモビーに戻ると見慣れた白髭の船が止まっているのがみえた。

「エースだ!エースが帰ってきたよ!!」

マルコはニヤリと笑って「帰るのやめようかよい」と意地悪をいう。

「もーっ!全速力でモビーに戻って!!」

「ハイハイ。お姫様!」

マルコはにこにこ笑っていた。

もしマルコに辛い想いをさせていたら申し訳ないなと思った。

でも私は…私にはエースが必要だから。

他の何を犠牲にしても守りたいものはエースだから。

急に黙った私の頭をマルコはポンポンと撫でてきた。

「がんばれよい」

マルコは本当にいい人だ。

私は心からありがとうって言った。

マルコが後押ししてくれなかったら私は今もひとりでウジウジと悩んでたと思う。

だから本当にマルコには感謝してる。

マルコはモビーにつくと相変わらずモタモタしている私ををひきあげてくれた。

モビーに乗り込むとすぐにエースがこっちに歩いてくるのが見えた。

すごく久しぶりに会うように感じて私は恥ずかしかった。

エースはとても疲れているようにみえた。

「エース!!おかえりなさい!!無事でよかった!!」

私はマルコの手前、抱きつきたい衝動をおさえた。

「随分、早かったよい」

「ちょっと!早くないし!待ちくたびれちゃったよ!!」

「ハイハイ。エースがいないと寂しくて眠れないんだもんな」

マルコが私をからかう。

「もーっ。マルコはぁ」

私はいまからエースに告白することで頭が一杯だった。

「ねぇ、エー」

エースは私たちになにも言わず走っていった。

私は慌てて後を追った。

でもエースに追い付けるわけがなく私は泣き出しそうだった。

急にエースがとまったので私はやっと追い付いた。

荒い息を整え私はエースにきいた。

「エース?どうしたの!?何か怒ってる?」

嫌な沈黙が流れる。

「ねぇ、エース…」

私はソッとエースの腕に触れた。

逞しい私の大好きな腕。

温かさを感じたその瞬間、私の手はエースに振り払われた。

一瞬、何が起こったかわからなかった。

エース…どうしたの?

私はただ、ただ悲しかった。

もう私が嫌になった?

なにもいえないでいるとエースが話し出した。

「ごめんな。…俺、やっぱりおまえのこと妹として見れねえ…
これからは…マルコに守ってもらえ」

エースはすごく辛そうな顔をしていた。

それだけいうとエースはさっさといなくなってしまった。

一人残された私は混乱していた。

とにかくエースとちゃんと話がしたい。



私はエースを探した。

あちこち探し回ったけど結局、エースは部屋にいた。

ノックをして中へはいるとエースは薄暗い部屋のなか、ベットに突っ伏していた。

「エース…?」

返事はない。

私はベットに腰かけた。

「でていけ」

冷たい口調だった。

私はめげそうになる気持ちをおさえた。

「エース…きいて?」

「うるせえ、なにも聞きたくねえ。」

私は右手でエースの背中の白髭の入れ墨にソッと手をふれた。

左手で自分の胸をおさえた。

また振り払われたらどうしようと思ったけどエースは何も反応を示さなかった。

「エース…私ね、ここにいられることを私は奇跡だって思ってる。
だからもうここにいられるだけでいいと思った。
…思ってたんだけど…
どうしても自分の気持ちをおさえきれなくなってきたの。
私は妹はイヤだよ。

エースが好き。大好き。
エースが私のこと嫌いでも私はエースのことが…好きなの」

エースは何もいってくれない。

それが答えなんだと思って私はベットから立ち上がった。

するとガッとエースに腕をつかまれた。

「ユリアはマルコのことが…好きなんだろ?」

寂しそうな目。

やっぱり。

エースは誤解してたんだ。

誰かから噂をきいてしまったのかもしれない。

私はため息をついた。

「マルコに好きだって言われた。
でもはっきり断って今はいい友達になったよ。


エースはやっと私の目をみてくれた。

「エースは気づいてないかもしれないけど、私はずっとずっと前からエースのことが好きなんだよ」

エースはなにも言わず私を強く抱き締めてきた。

「もう妹って言わないで」

エースは更に強く抱き締めてきた。

「エ…エース嬉しいんだけどちょっと痛いよ」

エースは慌てて私を離した。

私は寂しくなって自分からエースに抱きついた。

「エース…何かいってほしいな」

甘い言葉を期待した私だったが次の瞬間ガックリきた。

グガーッッ

エースはまたもや眠ってしまっていた。

もー仕方ないなぁ。

私はエースを起こさないようにそっとベットを出ようとした。

するとエースが私の手をつかんだ。

「どこにもいくな」

そしてまたもや爆睡。

私はにやけながらエースの腕のなかに潜り込んだ。

寝ているエースがギュッと抱き締めてくれた。

もういつ死んでもいい。

そう思った。
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