美しい名前

□夢現
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エースは鼻唄を歌いながら私を白髭のところへ案内してくれた。

そこには重厚な扉。

鈍く響くノックの音。

扉を開き私は中へ入った。

「ん?おめえは誰だ?」

初めて会う白髭はとにかく大きかった。

なにも言わない私に痺れをきらしたのか白髭はもう一度問いかけてきた。

「おめえは誰だ?俺をやりにきたのか?」

ギロリと睨まれ完全にビビってしまった。


萎縮していると突然、白髭はグラララと楽しそうに笑いだした。

呆気にとられていると横にいたエースが「おまえ…オヤジの覇気がきかないのか??」とすごく驚いていた。

「えっ??覇気?全然気づかなかった…私…鈍いからかなぁ…」

一瞬の沈黙。

グラララ(笑)

ブハッ(笑)

白髭とエースが同時に笑いだした。

「で、おまえは一体どこのどいつだ?俺の覇気もきかないようなら見かけによらず、すごい手練れってことか?」

まだ顔に笑みを残したまま白髭は私に問いかける。

その時、見知った人物が部屋に現れた。

「マルコ!!」

ふいに叫んでしまった私をぎろっとにらむマルコ。

「おまえは誰だよい?俺のこと知ってるのかよい?」

私はこくんとうなずいた。

「あの…私はユリアっていいます。
白髭さんのこともエースのこともマルコのことも大体知ってます。
そして…あのっ…私、白髭さんと二人で話をしたいんですっ!!」

一気にまくしたてるとエースとマルコは不思議そうな顔をしながら部屋を出ていった。

しばしの沈黙。


「さーて…俺に話って一体なんだ?やっぱり俺を殺ろうってんじゃないだろうなぁ」

白髭は冗談っぽくほのめかす。

信じてもらえるかわからない。

でも私はこの人を、

エースが全幅の信頼を寄せるこの人を、

信じたい。

そう強く思った。


「なにからはなしていいのか…」

私はゆっくり話し出した。

自分が別の世界からきたこと。

これからの未来に起こること。

上手く説明はできなかった。

次から次に思い付くまま話した。

でも白髭はなにも言わず黙って話をきいてくれた。

全て話した。

言いたいことは。

伝えたいことは。


話終えると白髭は目を閉じた。


重苦しい雰囲気を破ったのは白髭だった。

「ティーチがなぁ。
…全く欲がねえもんだと俺は思っちまってた。
あいつにも野望があったとはなぁ…」

白髭は呟く。

すこし寂しそうに。

「私のいってること信用できないですよね?」

私はどうしたらこの人に信じてもらえるだろうかと必死で考えた。

私が別世界からきたという証拠をみせたい。

どうしたら…

またもや沈黙を破ったのは白髭だった。


「で、おめえはどうしたいんだ?」

私は白髭を見つめた。

「…信用してくれるんですか?」

「わからねぇ。だけどおめえはうそをついてるようにもみえねえ。てことは本当の話なんだろ?」

白髭はまたグラララと笑った。

すこし寂しそうに。

「私はっ!エースを……エースを守りたいんですっっ!!」

部屋が空気が一瞬、揺れたような気がした。

今のは一体なに…?

「覇王色の覇気…おめえ一体何者なんだ?」

白髭はもう笑っていなかった。

私も驚いた。

私が覇王色の覇気を…?

でもすぐに思考を切り替えた。

今は白髭に私の想いを伝えたい!!

「私は自分の命に代えてでもエースを守りたいんですっっ!
エースに笑っててほしい。
生まれてこなければよかったなんて思ってほしくない。
生きててよかったって…いつかそう思ってほしいんですっっ!!」


「おめえエースに惚れてるんだな。
…だがうちの火拳は一筋縄じゃいかねえ…
エースは心に深い深い闇を抱えっちまってる。
自分なんか生まれてこなければよかった、鬼の子なんだって、てめえでてめえの事をずっと攻め続けてやがる。
いままでもこれからもそれは続く。
おめえにあいつの哀しみ、虚しさ孤独を救えるのか??」

私は白髭の気迫に負けないように叫んだ。

「わかりません。
でも私は絶対に逃げない!!
私の死に場所はもうここなんです!!
死んでもエースを守る!守ってみせる!!」

荒げた息を整えるようにゆっくり呼吸をする。

そんな私をみながら白髭は点滴の管を引き抜いた。

「で、おめえはどうやってエースを守る?
覇王色の覇気も使えるようだがコントロールはできねえようだ。
見たとこたいしてつええようにもみえねえ。
…そんなおまえがエースすらやられっちまうというティーチ、海軍とどう闘う?」

怒っているのだろう。

白髭はさっきまでと雰囲気ががらりと変わっていた。

私は決心を口にした。


「…そんなことしたらおめえが…」

「わかってます。
私はこの世界の人間じゃないから。
でもいいんです。
エースさえ生きていてくれたら。
…エースにはあなたとルフィが必要なんです!」

白髭は目を閉じて深いため息をついた。

「…マルコには話す。
あいつには隠し事はしねえ。
それでいいだろう。」

私はこくんとうなずいた。

私は白髭の部屋を出た。
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