美しい名前

□夢の果て
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幸せな日々は突然、終わりを告げようとしていた。

サッチが…

ついにあの悪魔の実を…

テニイレテシマッタ。

みんなに自慢気に披露するサッチ。

私はマルコと白髭と目配せした。

予定通り白髭はすぐにティーチを呼び出した。

マルコはサッチを。

そして私はサッチの部屋に忍び込んだ。

悪魔の実はどこにもない。

時間がない…

私は焦った。

「ユリアどこだ!?」

廊下から私を探すエースの声がきこえた。

見つかるわけにはいかない。

私は更にサッチの部屋を探した。

その時、がチャリと扉がひらきそこに、いるはずのないティーチが立っていた。

ティーチは…血にまみれていた。

「おまえ、なにしてんだ?
ここはサッチの部屋だぞ」

ゲヘヘヘと笑う。

「ティーチこそ。
オヤジと話してたんじゃないの?」

「そんなのずらかってやったぜ。
もうここには用はねえからな。」

私はティーチが右手に悪魔の実を握りしめているのがみえた。

ということは…

「サッチとマルコを殺したの?」

サッチ、マルコの笑顔が頭に浮かんで泣きそうになった。

「まぁな。
俺はこれで全てをてにいれてみせる。
そこで、一つ提案だ。
俺はある能力で人の会話が聞こえる。
まぁ距離の制限はあるんだがな。
それでちょっと聞こえちまったんだ。
おまえがはじめて船にきた日
の夜だ。
覚えてるだろう?」

「何が言いたいの?」

「途中でオヤジが何かしやがって全部は聞けなかったんだが、おまえ未来がわかるんだってな?
それに敵の心や力も。
その能力はすげえぜ。
だからおまえ俺の仲間にならないか?
あぁもちろんエースも一緒でいい。
あいつの強さも役に立つ」

ゲヘヘヘと楽しそうに笑うティーチ。

私が能力者だと思っている。

沈黙が流れた。

私は一つ、確信をもっていることがあった。

「嫌よ。
私にはあなたの未来はみえない。
あなたは王になんかなれない。
なれるはずがないの。
私にはそれが見えるんだから」

私はゆっくりと話した。

ティーチはゲヘヘヘと笑い残念だといって私になにか攻撃をしてきた。

私はよけなかった。

というか早すぎてよけることができずティーチの攻撃を全身でうけとめた。

ティーチは時が止まったかのように動かなかった。

「おまえ…なんの能力者なんだ?」

ティーチの攻撃は私の体をするりととおりぬけた。

「残念ながら悪魔の実のの能力も覇気も今の私を傷つけることはできないの。


「一体なんで…??」

ティーチは全く理解ができないといったようすで愕然としていた。

「ティーチ、強さが全てじゃない。
…私はこの世界の人間じゃないから。
あなたは所詮、作られたモノ。
実体のある私には敵わない」

そう。

この世界の覇気や悪魔の実の能力は今の私にきくことはない。

私にはもうひとつの現実があるから。

でもこれを認めることはすごく、怖かった。

それはエースも、否定することになるから…

でも認めないと前に進めない。

私はエースを守る。

ティーチはまだ理解できてないようで私をしつこく攻撃してきた。

私は痛くない。

ナニモカンジナイ。

「ティーチ!おまえなにしてんだ!?」

そこには怒りでわれをわすれた様子のエースが立っていた。

「エース!!こないで!!」

私はティーチの攻撃をうけながら叫んだ。

エースは私の言葉が聞こえてないようでティーチを炎の槍で刺した。

いてーーーーっ

もがき苦しむティーチ。

そのすきに私はティーチから悪魔の実を奪った。

「大丈夫か?!ケガしてないか??」

心配そうなエース。

私は大丈夫と笑った。

エースは何か言いたそうな顔をした。

私はそれを待たず悪魔の実を口にした。

次の瞬間、想像していたことが想像以上の苦痛とともに訪れた。

身体中に痛みを熱を感じた。

突然、溢れ出す血。

痛くて苦しくてたまらない。

悪魔の実をくちにするということ。

それはこのワンピースの世界に深く深く入り込んでしまうということ。

つまりさっきの効かなかったティーチの攻撃が蘇ってくるということ。

あぁ…

でもこれが私でよかった。

心からそうおもった。

エースのこんな姿、私は耐えられない。

あんな現実はみたくなかった。

別の世界から死にゆくエースをながめてなにもできないのはいやだった。

あんな夢はもうみたくない。

ティーチは怒りに狂っていた。

エースの攻撃がきいたようでフラフラしながら立ち上がった。


「おまえ!!
俺が長年ずっとずっと探し続けた悪魔のみを食いやがって!!
こうなりゃもう仕方ねえ。
エース!おまえ俺の仲間になれ!そしたら夢は終わらねえ。
それにユリアにとどめを刺すのはやめてやる!!」

エースは私をみた。

私は微かに首をふった。

「夢だと…笑わせるなティーチ!
力に屈したら男に生まれた意味がねえだろ!!」

ティーチは舌打ちした。

私にとどめをさそうとするティーチを私は闇で呑み込んだ。

更に体を激痛がはしる。

「大丈夫かよい?」

血だらけのマルコがそこに立っていた。

そしてみあげるとそこに白髭もたっていた。

すごく具合が悪そうだった。

大丈夫?そう聞きたかったけど声がでなかった。

「ユリアおそくなってすまねえ。
あいつはもう俺の息子なんかじゃねえ。
やっぱりおまえがいったとおりだったな…」

白髭は怒り狂っていた。

「オヤジ…医者を呼んでくれ!誰か!ユリアを助けてくれ…」

私は微かに動かせる左手でエースの頬をつたう涙を拭った。

「死ぬな!おまえ、俺に死ぬなっていったじゃねえか!だからおまえも…死ぬな!!」

私は痛みのなか、この上なく幸せだった。

ずっと不安だった。

ちゃんとエースを守れるかどうか。

でもこんな私だけどエースを守ることができた。

私はこの世界にきてはじめて心から安堵した。

もうなにもいらない。

私はエースをみつめた。

もう一緒にいられない。

苦しかった。

微かだが声がでた。

「エースは一人じゃないよ。
オヤジも白髭海賊団も、それにルフィもいる。ガープもロジャーもルージュもみんなあなたを愛してるから。
だから…どうか…生まれてきてよかったのかなんて思わないで」

エースは私をきつく抱き締めた。

「死ぬな!ユリアがいなきゃ俺は生きてる意味がねえ」
ボロボロと流れる涙。

エース…あなたはいつだって、美しい。

「だからね…あかちゃんが欲しかったんだ。
私とエースを繋ぐ未来を…この世界に残したかった…」

あぁなんか痛みがぼやけてきた。

この世界にいるという感覚が消えかけている。

あと少し。

あと少しだけでいいから私に時間をください。

「エース…
泣かないで。
愛してるよ。
…エースこんな私を愛してくれてありがとう…」

私は最後の力をふりしぼってエースの記憶を闇で奪った。

わたしの名前を呼ぶ声がどこか遠くできこえたような気がした。
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