空の唄海の涙
□プロローグ
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少女が一人、立っていた。
「ここにいちゃ‥いけない‥‥」
少女の瞳は、悲しみに満ちていた。
「行かなくちゃ‥‥」
希望のない、絶望に満ちた瞳。
「遠い、遠いところへ‥‥」
深い深い、光の届かない海の底のような瞳。
少女は、右手に持っていた剣を紅に染まった床に突き刺した。
突き刺した剣の周りから青白い魔方陣が現れ少女を包み込む。
「ごめんなさい‥‥」
海のような蒼の目から、涙が溢れていた。
涙の雫は少女の頬を伝い、魔方陣の上で弾ける。
少女はそっと、自分のつけている空色の石の付いたピアスに触れた。
「私はもう、誰も傷つけない‥‥」
まるで自分に言い聞かせている様に。
「ごめんね、さよなら。海斗‥‥」
その言葉と同時に魔方陣が一際輝いた。
青い光に包まれ少女は消えた。
少女のいた場所には涙の跡がうっすらと残っていた。
少女は、旅立った。
同じように自らの故郷から旅立った者達が集う場所へと。
少女の旅が今、始まる。