隠れ桜

□第一幕
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第一話、我が儘な告白

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『ぅ……。」
小さく身動ぎした少女は
ふと目を見開いた。

「よぅ…目ぇ覚めたかい?」

『………どわっ!?
 だっ…………誰だ!?」

「勝手に倒れといて忘れてんのか…υ」

『勝手に倒れといて…?
 …あ。」
少女は昨晩を思い出した。
確か妖怪に襲われ、
彼が助けてくれたのた。

「あんたは、何者だい?
 妖怪…いや、只の妖怪じゃあねぇな。」

調子も戻り、
『………!?
 良くお分かりで。」
余裕を持って言う彼女に、

「何なんだ?」

『銀狐だよ…。」

「な……ッ!?
 銀狐が何で圧し負けてたんだ!?」

『俺には契約主が居ないから」
どんよりと言う銀狐にリクオが、
「じゃあ俺が契約主になってやる。
 俺は奴良組若頭、奴良リクオだ。」
と笑った。

『えッ…?
 わかってんのか?銀狐の契約主は
 銀狐が人を喰らう代わりに
 自分の血を喰らわせんだぞ!?」

「知ってる。
 俺はアンタに惚れた。
 俺と契約して俺の女んなれ!!」

『は…はぁあああああ!?
 女ぁああああああああああ!?」


























--翌日--

「リクオ様!!この者は一体!?」
カラス天狗が悲鳴に近い声で問う。

「あ?あぁ、
 銀狐で俺と契約してて俺の女だ」
朝だからか、
昼の姿に夜の口調で答えたリクオ。

「銀狐!?リクオ様の!?契約済み!?」
機関銃の様にまくし立てるカラス天狗に
昼リクオは徐々に目を覚まし、
「うん。ボクの。」
ケラリと笑った。

『スー…スー…スー……。」
そんなことは露知らず、
眠りこける銀狐であった。
そして、
『ん…あれ?リクオ、お早う。
 ………あ。はじめまして、
 カラス天狗さん。この度、
 リクオ様と契約させて
 いただきました、銀狐の狐九です。」
昨夜とは違い、
女子らしい表情と仕草で言った。

「リクオ様、では狐九様が
 奥方となられるのですか…?」
カラス天狗が控えめに問う

「そうなるかな…(ニコッ)」
堂々と言い放つリクオ。

「若頭襲名の時に言うつもりだから。」

《妖怪とは
 子を為せませんそ…リクオ様。》
カラス天狗がリクオに目で訴えたが
リクオは気付かず仕舞い。




































『じゃあリクオ、
 いってらっしゃい。
 明日からは中学校とやらに
 一緒に通うからね。」
狐九は微かに微笑んだ。

「いってくるよ。狐九。
 皆と仲良くねー」
リクオは側近の氷麗と共に
門をくぐり、学校へ向かった。

今朝、リクオに突然奥方の存在を
紹介されたばかりの氷麗
(とその他妖)は睨みを利かせながら
「狐九様、くれぐれも
 御気を付けを。」
と、リクオを追い走り去った。

『…さて。
 部屋片付けようか…」
奴良組屋敷に入っていく狐九。

「狐九様、お片付けですか…?」
首無は問い掛けた

『あ、はい。」
無難に返した狐九。

「手伝いましょうか?」

『あ、はい。」
やはり無難に同じ返答を返す狐九。

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荷物整理を手伝う首無が
驚きの物を見つけ狐九をちらりと見た。
「これ………!!」

『あ。」
首無が見付けたのは注射器と薬瓶だった。

『えと、ここって医療関係の人居る?」
「鴆と言う妖怪が」

『その人に会えるかな?」

「あ、今ここに来て…【ガララ】鴆殿!!」
首無が、入って来た
鴆に向けて言葉を発した。

『貴方が鴆さんですか?」

「アンタがリクオと契約した銀狐か?」

『はい。
 すみません、首無さん
 少し部屋を出て頂いても良いですか?」
首無に頼み、出てもらう。

「銀狐、」
『鴆様、奴良組で
 医療に携わっていると聴き、
 こちらを預かって頂きたいのです。」
先の注射器と薬瓶を出す狐九。

「これは…?」
『銀狐の暴走を抑える薬です。
 銀狐には普通の妖への
 鎮静剤は効きません。
 もし私が暴走したら
 それをうって眠らせてください。」
一礼し、狐九は恭しく
注射器と薬瓶を差し出した

「あぁ…わかった。
 ところで。」
鴆はあっさり了承すると
突然、狐九に笑い掛けた

『うわぁあっ…コホン。
 なんでしょう…?」
突然ニコニコされたものだから
狐九は咳ばらいをし、問い直した。

「銀狐の契約方法で
 契約してねぇな?」
図星であった。

『説明が恥ずかしいのです。」
「俺から話してやろうか?
 さりげなく。」
『誠ですか!?“さりげなく”
 宜しくお願い致します!!」
「任せな。」
頼もしい返事をした鴆は
部屋を出て行った。

銀狐の契約方法、それは接吻だ。
しかも唇という、女としては
重大な場所であった。

《…こんな気持ち初めて。》
胸中で感じる胸の鼓動の
意味をしるのはまだまだ先であった。

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--リクオ帰宅--

「リクオ!」
鴆がリクオを呼んだ。

「鴆君!
 どうしたの?」
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