Story

□猫とねずみのけんか
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ねずみの言い分



ドタバタと音を立てながら階段を上ってくるのはきっと彼女だ。

そして、上りきって正面にあるこの部屋のドアを竜巻が発生するのではと思わせる程な勢いで開け


彼女の猫のような双眸がきっと、僕を真っ直ぐに見つめ否睨むのだ
(となると僕は鼠といった所だろうか)


そして、次の彼女の行動はこうだ。桜の花弁のような色をした唇をすこし尖らしながら


「私のチョコミントアイス食べたでしょ!」

って、僕に問い詰めるに違いない。だって、食べてしまったのは僕だから


こうなる事は、分かりきっていた。
僕が冷凍庫を開けて
空とミントを混ぜたような色をした丸い君が視界に入ったその瞬間から


はっきり言って、歯磨き粉みたいな味のする君が好きとは言えない

(なら、何故食べたかって?)

その質問は、愚問だ
男性陣に問いたい。隣に彼女がいても、誰もが魅了される美人がいたら目で追ってしまうだろ?


そういうことさ。
僕にとって、チョコミントアイスは
抗えない魅惑なのだ。



猫の言い分



空が青々としている休日の昼下がりに
私は真っ赤なマグマの如く苛立っていた。
また、冷凍庫に隠しておいたはずのチョコミントアイスがないのだ


――犯人は一人しかいない。

だって、犬のジョンレノンは食べることは出来ないし
(だって、犬が自由に手を使える所を見た人は居ないでしょ?)
そしたら、ひょろっと細身の彼しかこの家に自由に手を使える者はいない。


しかも、彼は街を歩く誰もが振り返る美人よりも
冷凍庫にちょこんといるチョコミントアイスの方が魅力を感じるだなんて

(彼女以外の人に鼻の下を伸ばすより、いいじゃないかって?)
好物を毎回、食べられる方が嫌に決まってるじゃない!
食べ物の恨みは、恐ろしいのよ?


あぁ。なんとも、腹立たしいことこの上ないわ!

ハリセンボンもびっくりの膨れっ面で、彼が居る書斎に向かった
(きっと、あの千本の針で刺しても割れないぐらいの膨れっ面だと我ながら思う。
…あ、でもチクンと痛いだろうけれど)


「あぁ!私の幸せなチョコミントアイスとの休日はどこに行ってしまったの?!」


あれもこれも、全て。
全て、彼のせいだわ



 
今日も始まる、猫とねずみの追いかけっこ


 

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