小ネタ話
□届かぬ声
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一度捨てたこの命、全てを三成殿へ捧げたあの日から…私は友情の為だけに戦っていた。
しかし
天下分け目の関ヶ原
到着に間に合わず、辿り着いた時に広がっていた光景は惨かった。
道を塞ぐように倒れる動かなくなった人を避け、不安な気持ちを露わにしながら早々に本陣へ向かう
「三成殿…」
そこに倒れていた三成殿に近付いて、声を掛けたけど返答はない。
「三成殿…っ、三成殿!!」
何度も何度も貴方を呼ぶけれど返ってくるのは静かな雨の音だけ。
私は膝をつき、まだ体温の残るその身体を優しく抱き締めた
三成殿…
貴方はいつか、こう言いましたよね…
俺が死んだら俺との友情に生きると言ったお前はどうなるのだろう…と
…判りますか?
貴方の知りたがっていた結果が、この様です
ねぇ、三成殿。
早く馬鹿にして笑って下さいよ
援軍が遅いと、不機嫌な顔で怒って下さいよ
いつもみたいに
幸村、と呼んで下さい…
冷たくなっていくのを拒むように貴方の身体を抱き締めた腕は赤い色で染められるだけだった。