総ては雨でした。

□【過去】霧深い、その先の明かりに。
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高1の夏に煙草を覚えた。
あいつが吸ってたから。自分を少しでも壊したかったから。

あいつのポケットにはいつも煙草が入ってて、『ああ多分俺とこいつは住む世界が違う』とすぐに理解した。
ずっと大好きで、ずっと会えなかった人。
ようやく再会したのは高1の夏祭りだった。
その時あいつには彼女がいた。
そのくせ俺に優しくするから、帰り道は切なくて沢山泣いたよ。

それにあいつが若干不良入ってたのを理解して、でも好きだったから少しでも近くに行きたくて、煙草を買ってみたんだ。
その頃の俺は、まだ中一の頃の彼女のことを引きずって自傷ばっかしてたからもっと自分を傷付けられる気もして、嬉しかった。

それから1ヶ月、彼女と別れたとあいつが言った。
俺はすがるのが、恐らく得意なようだった。
だから『嫌われる』つもりで告白した。
そんなの当然、『少しの期待』の裏返しだったのに、俺は自分を綺麗だと思い込みたくて、『嫌われる』つもりで告白した。

晴れて俺はあいつと付き合うことになって
制服デートも、帰り道でのキスも、した。
けど俺は満たされない想いを抱えていた。
なぜって、それはきっと恐かったから。
メールでも口でも囁いてくれる『すき』も、温かな手も唇も。
俺はずっと、中一のときの彼女のせいで人が怖いまんまだった。
それに気付かないで、馬鹿な俺は淋しいって叫んでいたんだ。
いざ優しくされると怖がって逃げるくせに。

だからゆらゆらと曖昧に浮かんでは消える煙草の煙が、俺の心みたいで、嫌いになった。
10月には煙草を止めた。
12月には別れを決めた。
都合よくあいつが浮気らしいことをしてるのを見たから。

なのに、別れたら別れたで、また会いたくなる。

怖がりの寂しがり。

手に負えない我が儘。

結局そのあと2年間、引きずったっけ。
何度もやり直しかけた。

俺は多分、自分からは人を『愛』せなかったんだと思う。
簡単に『好き』にはなれるのに。

だからあいつには、ひどいことをした。
今となっては悪いのは全部俺なんだと理解る。


祭の灯を見ると、未だに思い出すよ。
大好きな君のこと。
だからまた、あの夏祭り会えたらいい。
『少しは強くなったよ』って笑ったら、きっと君も笑って髪をぐしゃって撫でてくれるよね?

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