紫本(デッシュ×ルーネス)

□monopoly(独占)
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 絶対に、放さない。


 『monopoly』


「俺に任せな!」
魔物との戦いで、先制攻撃。
何故か背負っていた刀を振りかざし、雑魚に止めを刺すと。
「サンキュ、デッシュ!後は俺らでやるから!」
背中に届くのは、決まってルーネスの声。
しっかりと、俺のすぐ近くまで迫っていた姿を、確認して。
「任せたぞ」
俺はひらりと身をかわし、ルーネスに場所を譲る。
すると、ルーネスは走りながら剣を抜いて。
「おりゃあっ!」
気合いとともに、目の前の敵に向かって躍りかかった。

結果。
敵は殲滅、味方は無傷の理想的な勝ちっぷり。
元々兵士であるイングズはともかくとして、他の3人もずいぶんと動きが良くなっている。
特に、生来がファイターに向いているようなルーネスは。
「また、腕を上げたようだな」
「へへ、まーな。俺だって一応、頑張ってるもんね」
あのイングズですら、ルーネスへの褒め言葉を口にしているのが、その証拠。
ルーネスも、奴に褒められるってのは嬉しいらしく、照れ笑い。
実際のところ、イングズを上回る敏捷性と、戦いにおけるセンスの良さは、かなりのものであるらしく。
だからこそ、彼は強くなってきているのだろう。
褒められて素直に喜ぶルーネスと、それを、普段よりもどこか温かい瞳で見つめているイングズを見ていると。
ちょっとだけ、喜べないのだけれど。


   *


野宿中の火の番は、体力面で女のレフィアはまず除外。
男でも、現在のジョブが精神面で疲労が激しい黒魔道師ってことで、アルクゥもほとんど除外。
そうなると、残りは俺と、イングズと、ルーネスで。
体力で勝る、俺とイングズがほぼ一日置きでその役を務めることになり。
合い間をルーネスが補うのが、通常。
だから、この時がチャンス。
眠る仲間から、少しだけ離れて背を向けて。
華奢な身体を抱き締めて、不埒な悪戯を仕掛ける。
勿論赤い唇は、塞いでやるのがお約束。

「……っ、んうっ……」
夜目にも鮮やかな白い肌に、わざとに強く吸い付いて。
紅い痣を散して、自己満足に浸る俺は、相当に悪党。
目にうっすらと涙を溜めて、俺の手に口を塞がれたままくぐもった声を漏らすルーネスは。
気持ちいいのか、嫌なのか、それすらもはっきりしない。
もっとも、嫌だと言われても、やめるつもりは毛頭ないが。
「なぁ……ルーネス」
俺はわざとに可愛らしい耳を舌でなぞり、低い声で囁いてみる。
「今度、どっかの町で泊まったときは、思いっきり啼かせてやっからな」
「んうっ!?」
「ホラ、あんまり高い声立てると、目敏いイングズが起きちまうぞ」
びくりと身を竦ませるルーネスの、怯えた瞳が可愛らしくて。
俺は口許に、意地の悪い笑みを浮かべると。
ルーネスの口を塞いでいた手を外し、赤い唇を喰らうかのように口付けた。


   *


 しっかりと。
 大事なものは、この手の中で。

 ずうっと、独り占め。




(次頁あとがき)
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