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□落日遠く
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霧を刺す弱い朝の陽。

明け方の寒い空気。

銀の葉に落ちた霜と、凍えた風。

忌々しい世界のすべてが、ひどく綺麗で。










ああ、だけど

すべてが正反対だ。










果てない高い空。
蒼を背景に飛ぶ鳥の影。

目蓋の裏をよぎるのは、
薄暮のあの砂丘。

白日の熱亮と、森閑の闇。









焦がれてやまない故郷。

やがて落ちるこの生命の記憶に
何度となく蘇る。















見える。










この瞳で、世界を見なくなっても。

「落日遠く」

生命の落日に見えるもの。
(拍手御礼文:070202)


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