BOOK

□一度くらい、愛してよ
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北山side








「・・・じゃあ、俺、もう帰るから」


「うん、」




俺は君が好きで、君はあいつが好きで。

すれ違う二人の想いが、交錯する。



俺は藤ヶ谷に"また、"と別れを告げてから藤ヶ谷の家の合鍵でドアを閉めた。





パタン。



「うっ、ひっく・・・ぁあ」



扉が閉まったと同時に溢れ出す涙。



・・・どうして、こんなことになったんだろう?

涙は、ただ溢れて頬を濡らす。



首元に薄く付けられたキスマークが、余計に悲しくて。


俺たちは、一言告げれば終わってしまいそうな関係だから。





ー君は、もともと好きな人が居て。


藤ヶ谷は優しいから言わないけど、態度を見れば一目瞭然。

ああ、ー・・・が好きなんだ。


でも諦めきれなくて、思い切って告白した。

・・・そしたら、OKもらって。


最初はただ嬉しくて、俺を好きになってくれたのかな、なんて思ったりもしていた。



でも結局、君はー・・・が好きで。


俺と話しているときも、あいつのことばっか気にしてる。

その時気付いてしまったんだ。


ああ、藤ヶ谷は俺のこと、・・・。





藤ヶ谷に嘘の"好き"を言われる度に、胸が苦しくて、痛くて、切なくて、
どうしようもなくなる。

でも俺は、自分から別れを告げる勇気なんてなくて。


それに、ーもしかしたら、まだ俺のこと好きになってくれるかも・・・って、期待してる。


辛いのは自分だって、解っているのに。






仕事場で、あいつと笑い合う君が、なんだかすごく楽しそうで。

見ていられなくなって、誰も居ないトイレに駆け込んで、



・・・小さく、震える声で呟いた。






一度くらい、愛してよ



(君に届くことのない、)

(叫び。)
















タイトルお借りしました。
「確かに恋だった」様から。

"あいつ"はご自由にご想像下さい!

ここまで見て下さってありがとうございました!




感想待ってます!


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