中編

□あなたに贈る永遠の誓い
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女性死神協会。
それは護廷十三隊の女性隊員による女性隊員の為の集団である。
六番隊副隊長である日番谷冬もまた、その一員として名を連ねていた。
…とはいえ、強引に会員にさせられただけであり、その会合に参加したことなど一度もない。
そもそも活動内容すらあまり理解していないし、興味もない。
だが、今回ばかりはそうも言っていられない。
迫り来るあの日のため、冬は初めてその一団の中へと足を踏み入れた。



「やっぱりハートよ。で、大好きって書いておけば間違いないわ」
そう言ったのは十番隊の松本副隊長だ。
「でも、直球すぎませんか?それに彼女はそういった意味ではなく、日頃の感謝の意味でとのことですし…」
そしてそれに反論を示したのは七番隊の伊勢副隊長。
だが、松本副隊長はさらに興奮した様子で言葉を続ける。
「何言ってるのよ!自覚がないだけであれはもう間違いないわ!!それに朽木隊長のほうも…」
ああでもない、こうでもない。
女性たちは激しい議論を繰り広げる。
まさかこんなことになると思っていなかった冬は、居心地悪く縮こまっているだけだ。
そもそも、ことの始まりは昨日のこと。
迫り来るは二月十四日。現世にてバレンタインデーと呼ばれる日だ。
女性が好きな男性にチョコレートを贈る日らしいが、近年では友人同士や、感謝の意味で渡す者も増えているらしい。
幼馴染みであり、姉のような存在でもある雛森からその話を聞いた冬は、考えた末上司である朽木隊長に贈り物をすることにした。
だが、冬はバレンタインデーに便乗したこともなければ男性に贈り物をしたこともない。
どうすればよいか雛森に相談したところ、どこから聞き付けたのか女性死神協会の面々が現れたのだ。
相談に乗ってくれるとの言葉に甘えここまで来たのは良いものの、何故こんな大事になってしまったのだろう…
(俺はなにか助言を貰えればそれでよかったのに…)
それに、彼女達はあくまでチョコレートについて議論しているようだが、冬は始めからチョコレートを渡す気などない。
というのも、朽木隊長は甘いものを好まないのだ。
甘くないチョコレートやお酒の入ったチョコレートもあるようだが、あの人がそれを気に入るとは思えない。
「あの…朽木隊長に甘い菓子は…」
ざわつく部屋の中、小さく主張してみるものの、議論に白熱している女性達の耳には届かない。
…いや、全員が全員そうというわけではないらしい。
騒ぎに加わっていなかった三人の女性がこちらへと近づいてくる。
三人の内二人は白い羽織を纏っている。
卯ノ花隊長と砕蜂隊長だ。
そしてもう一人はあの人の義妹であり、己にとっても友と呼べる存在。朽木ルキアだ。
「冬さん、大切なのは気持ちです。貴女が心を込めて贈ったものならば、朽木隊長はきっと喜んでくださいます」
「あの男はお前には甘いようだからな。例え嫌いな物でも文句は言うまい」
「はぁ…」
心を込めて…大切なのは気持ち…
言葉にするのは簡単だが、いざ実行しようとするとなかなか難しい。
結局、どうしたらいいのだろうか…
「あの、日番谷副隊長。菓子にするかはさておき、実際に店に行ってみてはどうでしょう?」
確かに、実際に品物を見ればなにかいいものが見つかるかもしれない。
なんにせよ、こうしてうじうじ悩んでいるよりはずっといいだろう。
「そう…だな。そうしてみる」
そうと決まればここに長居は無用だ。
今日は非番だし、仕事も問題ないだろう。
だが…
「…なぁ、朽木…」
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