捧げ物

□とある家族の穏やかな一日
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「…おやまぁ皆サンお揃いで…」
かつてと何ら変わらない軽い調子の男。
追放された彼にこんな形で会いに来ることになるなど思ってもいなかった。
「アタシ、何かしましたっけ…って、冬獅郎サン!?」
不思議そうに彼らを見ていた浦原だったが、その腕に抱えられた幼子を見つけると、驚愕に目を見開いた。
「何じゃ騒々しい…」
騒ぎを聞きつけたのか、店の奥から姿を見せたのは一人の女性。
「夜一様!!」
「そ、砕蜂…それに白哉坊、浮竹、京楽まで…いったい何ごとじゃ?」
女性―四楓院夜一は、浦原の隣へと立つと、同じように驚いた様子で訪問者たちを一瞥する。
そしてやはり、幼子の姿に声を荒げたのだった。



「そうですか、開発局の…」
「ふむ…あそこもたまには良いことをするもんじゃな」
浦原は小さくなった我が子を膝に乗せ、へらへらとだらしなく頬を緩ませる。
それを覗き込む夜一もまた同様だ。
そして、抱えられた冬獅郎も一段と嬉しそうにしていた。
なんだかんだ言ってもやはり一番はこの男…
四人はそう、改めて思い知らされた。
四人の胸に湧き上がるのは多少の悔しさ。
だが、一番は愛し子の幸せ…
この子が望む…この子にとって一番幸せな場所…
「アタシは…この無垢な瞳を裏切ったんッスね…」
「きすけ?」
「…なんでもないですよ、冬獅郎サン」
浦原は切なげに目を細めた後、そっと冬獅郎の柔らかい銀糸を撫でる。
一度はなくしたその場所…
取り戻したこの時間を…我等は守らなくてはならない…
それはこの子が大きかろうが小さかろうが関係ない。
ただ、この子という存在の為に…
「皆サン、今日は泊まっていかれますよね?」
決して広くはない一室。
冬獅郎を囲むように、彼らは雑魚寝を繰り広げた。
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