捧げ物

□あにまるせらぴー
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七番隊員は突然の来訪に驚いたようだが、五郎の姿を認めると、すぐに狛村のもとへと通してくれた。
五郎が懐くなんてと驚かれたのが気になったが、確かに五郎は七番隊の隊員にも唸り声をあげていた。
どうも気難しい犬のようだ。
「狛村、邪魔するぞ」
「日番谷か?どうした」
書類仕事をしていた大きな体躯が立ち上がり出迎えてくれる。
「ちょっと迷子を届けに…な」
後ろを着いてきていた五郎を手招きすれば、勢いよく駆け込んでくる。
主人の匂いがわかるのだろう。尻尾の降り方が先ほどの比ではない。
「五郎ではないか!お主、どこへ行っておったのだ。心配したのだぞ」
「うちの隊舎の庭に迷い込んでた。首輪に名前が書いてあったからな」
「そうか…わざわざすまなかったな」
それから、狛村と共に隊舎裏の小屋へと五郎を送り届ける。
聞けば、やはり五郎は狛村以外にはなかなか懐かず手を焼いていたそうだ。
今も脱走の報告を受けてはいたが手が離せず、やむを得ず射場をはじめとする隊士達に五郎を探させていたらしい。
その仕事もキリになったという言葉に甘え、執務室に戻り茶を呼ばれる。
隊長達の中で一番大きい狛村と、一番小さい日番谷。
二人の組み合わせはそれぞれの体格をより際立たせて見せた。
「貴公も犬は好きか?」
「ああ。それに、昔からなんか懐かれやすい体質みたいだしな」
「なるほど」
物静かな二人の間には終始和やかな空気。
思わぬ共通点にも、二人は楽しげに会話を弾ませた。
ふと、日番谷が湯呑を置いてある一点をじっと見つめる。
視線の先は狛村の…耳だ。
「あの…な、狛村。ちょっとだけ…触ってみてもいいか?」
「む…儂のこの耳か?あまり触れられるのは好まぬのだが…貴公ならよかろう」
…本当のところ、狛村は少々戸惑っていた。
耳を触られるのは好まぬというか…正直に言うと苦手だ。
だが、目の前の少年は自覚があるかはわからないがまるで子供の様に目を輝かせている。
…まぁ実際子供なのだが。
珍しく年相応なその姿を見ると、無下にするのも気が引けてしまう。
「背に乗るといい。その方が楽であろう」
「…悪い」
自身の身長の半分もない少年の手が届くよう小さくかがむ。
ぽふっと背に登った体のあまりの軽さに、狛村は小さく息を飲む。
こんな小さな体で、どれほどのものを背負っているのだろうか…
そんなことを考えていると、ふにふにと耳に触れる感触。
こそばゆくはあるが、心地よくもあった。
「思ったよりふわふわなんだな…もっとごわごわしてるのかと思った」
「手入れには気を使っておるつもりだからな」
少々遠慮がちに…けれど楽しそうな少年の姿に、自然と笑みが零れる。
時には…こんな時間も悪くない。
それに、この無理しがちな幼き隊首には息抜きが必要だろう。
「日番谷…貴公さえよければいつでも来るといい。五郎も喜ぶ」
日番谷を背に乗せたままそう提案する。
すると、日番谷はやはり遠慮がちに…そして、嬉しそうに小さく頷いた。


それから…七番隊舎では時折犬と戯れる小さな隊長と、それを見守る大きな隊長の姿が見られるようになったのだった。







一万打企画、33town様に捧げる狛+日でほのぼのでした。
狛村さん=犬、しか思いつきませんでしたw
でっかいのとちっさいのがわんこと戯れてたら可愛いよな〜みたいな。
狛村さん初めて書きましたが、この組み合わせ…意外と有りかもしれないですねww

改めまして、リクエストありがとうございました!
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