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□巡りし光の行方
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黒崎一護15歳。
職業、高校生兼死神代行。
そんな肩書きを背負って早幾日。
連日現れる虚退治でめまぐるしい日々。
そんな時、その男は現れた。
『石田雨竜。僕は死神を憎む』
滅却師だか何だか知らないが、いけすかないやつ。そんな印象だった。
人の顔と名前を覚えるのが苦手な俺は、その男がクラスメイトであることなど知る訳がなく。
まして、彼の妹と己の妹達が友人同士であることなど知るはずがなかった。


珍しく虚が現れず、明るいうちに帰宅できたある日。
玄関には妹の物のほかに見慣れない靴が一足。
妹の友達でも来てるのか、その程度にしか思わなかった。
案の定。居間へと足を運べばそこには二人の妹と見慣れない少女が一人。
銀色の長い髪がさらさらと流れる。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
「お邪魔しています」
こちらに気付いた妹達、そして銀髪の少女がぺこりと頭を下げる。
「…」
その珍しい色彩に目を奪われた…とでもいうのだろうか。
俺は直ぐに言葉を返すことができなかった。
「一兄?」
「ん、ああ、ただいま。そっちは友達か?」
「うん!石田冬雪ちゃんっていうの」
「そっか。ゆっくりして行けよ」
「…ありがとうございます」
一瞬、少女の目が鋭く己を射抜いた気がした。
そこには僅かに殺気すら感じられたように思う。
(…まさかな)
相手は小学生の女の子だ。そんなことがあるはずがない。
勘違いだ…俺はそう決め込むと、居間を後にしたのだった。


自室に入ればそこには先に帰宅したのか居候の姿。
だが何やら様子がおかしい。
呆然としている…
そんな表現がぴったりだろうか。
「おい、ルキア?」
名を呼べば、ビクリと肩が跳ね、こちらへと視線を移す。
その瞳はまだ驚きからか、見開かれている。
「一護…あの少女は…」
「少女?ああ、夏梨たちの友達のか?」
居候―朽木ルキアは、妹達のことは既に知っているはずだ。
ならば、少女という言葉がさすのは初対面であろうあの子しかいない。
「確か…冬雪。石田冬雪とか言ってたな」
「冬雪…殿…」
ぽつりとその名を零した後、彼女の頬を伝ったのは一筋の涙。
突然涙を零すルキアに、俺は慌てたように声をかけた。
「お、おい!なんだよ急に!?」
「すまぬ…なんでもないのだ…ただ」
―ただ、あの方が笑っていることに…安心した―
何のことか、意味が分からなかった。
あの少女とルキアに接点があるようには思えない。
それも、涙するほどの…
首をかしげることしかできない俺に、ルキアは涙をぬぐいながら笑って見せる。
「彼女は…おそらくとあるお方の転生者だ」
「転生者?」
「ああ。尸魂界に送られた魂は転生の時を待つ。死した死神もまた、転生するのだ」
生まれ変わる…夢のような話だ。
自分が死神代行などという存在になってなければそんな馬鹿なと笑い飛ばしたかもしれない。
「巡った魂に前世の記憶はない。あの方は新たな命を得、新たな生を歩むのだ」
その生が幸せであればいい…
そう言ったルキアは、嬉しそうで…それでもどこか悲しげで…
きっとあの少女の前世であるという人物はルキアにとって近しい人だったのだろう。
そんな人が近くにいる。けれど、その人はもう…その人であってその人ではない。
その心中は複雑…そんなところか。
「石田冬雪殿か…良いお名前だ……ん?石田?」
もう一度口にしたその名。
それに何か引っかかるものを感じたのか、ルキアは首をかしげる。
「一護…そういえば、先日鉢合わせた滅却師とやら…あやつも石田という名ではなかったか?」
「…あぁ?あーそういえば…石田…なんだっけ?ウイリー?」
「雨竜だ。石田雨竜」
突如、第三者の声が割り込む。
幼さの残る…けれど、凛とした心地よいアルト…
バッと振り向けば、開いたままになっていた自室のドアから、銀髪の少女がこちらを見つめていた。
「お前…」
「石田雨竜。俺の兄貴だ。黒崎一護…お前は兄貴の敵…だから俺にとってもお前は…お前ら死神は敵だ」
少女はその瞳にはっきりと敵意を宿し俺やルキアを睨みつけている。
それは十歳の少女が見せるような眼ではない。
「ひ――やた―ちょ…」
ぽつりとルキアが零した言葉は上手く聞き取れない。
けれど、ルキアの表情からは驚愕、落胆…
…大袈裟に言えば、絶望…
そんな感情が窺える。
「…それだけだ。邪魔したな」
「あ、おい!」
少女が踵を返し、銀の髪がふわりと翻る。
俺は後を追うこともできず、ただその背中を見送った。




「ったく、なんなんだよあの餓鬼は!」
少女が去ってすぐ、今度はちゃんと扉を閉めてから、俺はそう吐き捨てる。
何故五つも年下の少女に敵呼ばわりされなくてはならないのか。
兄妹そろって意味が分からない。
俺が…死神が、いったい彼らに何をしたというのだ。
「…おい、ルキア。いつまでぼうっとしてるんだよ」
少女に会ってから様子の可笑しいルキアはいまだ呆然と少女が出て行ったドアを見つめている。
…あの少女、死神の転生者だと言っていた。
そんな少女に敵だと言われたことが、よほど応えたのだろうか…
「…前世の記憶、ないんだろ?だったらそいつを重ねたらだめだ。そいつはそいつで、あいつはあいつ…だろ?」
「…ああ、そうだな」
励ましになるのかわからないけれど、かけた言葉にルキアは小さく笑みを見せる。
それにしても…
「滅却師…か。調べてみる必要があるな…」
俺が言うよりも早く、ルキアがその言葉を紡ぐ。
訳のわからぬまま敵扱いされるなど真っ平御免だ。
それに…あんな幼い少女と戦うようなことにだけは、したくない。


そしてその翌日。
俺は石田雨竜がクラスメイトであることを知る…







またやってしまったぶっ飛んだ設定…
転生日番谷を巡る話が書きたいと思いまして…
で、考えてるうちに死神嫌いだったらなんか色々できるんじゃないかと思いまして…
で、死神嫌いといえば石田…
そうだ、兄弟にしてしまえと…
さらに、弟より妹の方がおいしいかなと…
…なんかもう、スイマセン。
とりあえずこれはお試し版ですね。
続き…需要あるかわかりませんが自分では割と気に入ってるので多分書きます。
あ、名前はふゆきと呼んでください。ちょっと強引だけど。
兄貴が雨だから妹は雪を入れたかったんです。
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