捧げ物

□安らぎの休息を君に
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隊首会の最中、総隊長の話を聞く傍ら、隊長達はちらちらととある一点に視線を送っている。
視線の先には一人の少年の姿。
いつもなら真面目に隊首会に臨んでいるはずの彼がどこか上の空。
加えて頬は紅潮しており、瞳は僅かにうるんでいる。
時折吐き出される息は熱を孕んでいる。
…どう見ても万全の体調ではない。
そのことには話を続けている総隊長も気付いているようで、同じようにちらちらと彼を見ていた。
「簡式じゃが、今日はこれにて閉会とするかの」
急ぐ要件もない。今は少しでも早く彼を休ませなければ。
しかし、時すでに遅く。
総隊長が言い終わるのと、小さな体が揺らぐのはほぼ同時だった。
「日番谷君!!」
床に倒れるより早くその体を支えたのは隣に立っていた京楽。
即座に駆け寄ってきたのは卯ノ花だ。
卯ノ花はそっと額へと手を伸ばすと、その熱さに顔を顰める。
他の隊長達もその様子を心配そうに見守っていた。
「かなり熱が高いようですね。早く四番隊へ」
「私が運ぼう」
京楽の腕から小さな体を抱き上げたのは朽木であり、彼もまたその熱さに眉を寄せた。
二人が一番隊舎を後にすると、残された隊長達も順に行動を始める。
「私の夜一様人形を貸してやるか…あれがあればよく眠れるはずだ」
「風邪にはネギがいいと聞いたことがあるが…」
「じゃあ僕は玉子酒でも差し入れしようかな」
「しょーがねぇなぁ…やちるにやるつもりだった金平糖、奴にくれてやるか」
「まったく面倒な餓鬼だネ。この私が特製の風邪薬でも調合してやろうか」
「冬獅郎!!待っていろ、今お見舞いに行くからな!!」
各々が慌ただしく隊舎を出ていく様子を、総隊長は満足げに見守っていた。
(ほんに愛されし子よ…)
そして、総隊長もまた静かに隊舎を後にするのだった。
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