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□巡りし光の行方7
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冬雪が足を止めたのは小さな祠の前だった。
どこかの庭のようなその場所に、ぽつんと立てられた祠…
妹を追って祠に近づくたびに、雨竜は背中に嫌な汗が伝うのを感じていた。
「お前が…俺を呼んでいたのか?」
冬雪はそっと祠の戸に手をかける。
ゆっくりと開かれた戸の向こうにあったのは…
「…刀?」
札のようなものが張られた長細い物…
星形の鍔のようなものから、おそらくそれが刀であろうことが伺える。
「死神の刀…斬魄刀か」
「斬魄刀?」
冬雪が小さく首をかしげる。
そういえばこの子は死神という存在を知ってはいても、あまり詳しいことは教えていないのだった。
「死神が虚と戦ったり霊を成仏させたりする武器の事だ。黒崎も持っていただろう?」
「あの馬鹿でかい刀のこと?」
「ああ」
しかし…何故こんな風に斬魄刀が祀られているのだろうか…
雨竜とてそこまで詳しく知っているわけではないが、斬魄刀とは必ず持ち主の死神がいるはずだ。
その力は持ち主のみに扱えるもので、言ってしまえば他人からすればただの刀でしかない。
それにこの札…まるでこの刀はここに封じられていたかのようだ。
「呼んでるんだ…この刀が…」
「呼ぶ?」
「うん…待っていた…会いたかったって…」
冬雪の細い指がそっと刀に触れる。
すると、刀は淡い光を放ちながらカタカタと音を立てて震えだす。
「ごめんな…お前の事、わからない…だけど…俺、来たから…」
刀にまかれていた札らしきものが一瞬にして凍り付き、粉々に砕ける。
「これはっ…」
目の前には巨大な氷の竜。
何処から現れたのか考える間もなく、龍は空へと飛びあがる。
そして、咆哮と共に冬雪へと向かって急降下する。
美しい氷の竜は冬雪を抱くように包み込むと、そのまま刀の中に消えていった。
身の丈ほどもある長刀は、何故か冬雪の手にしっくりと馴染んだ。
「うん…ただいま…」
「冬雪…」
ギュッと刀を抱きしめ、小さく微笑む姿は…妹とは、違う気がした…
「…とにかく、早くここを離れよう。今の龍に気付いて死神がやってくるかもしれない」
「うん、わかった」
刀を抱えたままの冬雪の手を引き、その場を駆け出す。
ここまで来たときは正直冬雪を追うことに必死で、どんな道を通ってきたかあまり覚えていない。
だが明らかに人の手の入ったこの場にいつまでもいることが最良なはずがない。
とにかくここを離れることだけを考え、二人は走り出すのだった。
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