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□巡りし光の行方3
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その日、町は虚に溢れていた。
空を埋め尽くす勢いで湧いてくる虚たちに舌打ちしつつ、冬雪は必死に走っていた。
この大量の虚と戦っているのは間違いなく兄とあの死神代行だ。
何が起こっているのかよくわからないが、この数相手に二人では危険すぎる。
それに…何か強い力がすぐそこまで迫っているような気がするのだ。
とにかく、急がなければ…
「そんなに急いで走ったら危ないですよ、オジョーサン」
「!?」
その男は気配もなく突然行く手に現れた。
下駄に帽子…見るからに胡散臭い。
「この先へは行かない方がいいですよん。ちょっとばかり、危ないのが近づいてますから」
「…」
男を信用するわけじゃないが、それが先ほどから感じている力のことなのだろうというのはすぐに分かった。
おそらく、この男は何か知っている。
虚もきっと見えているのだろう。
「何者だ、てめぇ…」
こんな男に構っている場合ではない、そう思うのに…
何故か足を踏み出せない。この男から、目を逸らせない…
この男が何か知っていそうだから…それだけではない気がした。
「…同じ目をしていますね…いつだって光に溢れた…アタシの大好きだった目だ…」
「…?」
「だけど、貴女はあの子であってあの子じゃない…貴女は貴女だ。一緒にしたら…ダメっスね」
「何を意味の分からないことを…」
「この先で貴女のお兄さんが戦っています。それに、黒崎さんも」
「!!」
問い詰めるよりも早く、男は淡々と語りだす。
この虚は兄が餌を用いて呼び寄せたこと。
それは黒崎との勝負の為だということ。
そして、メノスと呼ばれる強力な虚が現れつつあること…
「今行けば間違いなく戦いに巻き込まれます。それに大虚ともなれば尸魂界も見逃さない…引き返せなくなる」
「引き返す…?」
「貴女は力を持っている…ですが、間違いなく人間です。これ以上関われば、貴女はただの人間ではいられない」
この男は間違いなく知っている…
この力のことも、この力を持つ意味も…
そして…たどり着く先も…
「…」
確証などないが、そのどれもがきっと真実なのだと思う。
だけど…
「それでも、兄さんを放っておけるわけがない!!」
冬雪はそう言い放ち、再び駆け出した。
男は止めなかった。追っても来なかった。
ただ…一瞬見えた瞳は、どこか悲しげだった。
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