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□巡りし光の行方2
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死神は嫌い。
別に、何をされた訳でもないけれど…

『死神とは決して関わったらいけない』

そう大好きな兄が言っていた…ただ、それだけ。
…俺達の祖父は死神に殺された。
俺はまだ幼くて、祖父の記憶はないけれど。
兄が死神を敵として憎むというのなら、俺にとっても死神は敵だ。
俺達に無関心な父の代わりに俺を守り、育ててくれたのは兄だから…
俺にとって、世界は兄そのものだから…

なのに…時折感じる胸の痛みはなんだろう…



クラスメイト達が次々と出ていき、人の疎らになった教室。
そんな中、冬雪は鞄に教科書をしまいながら、ぼんやりと窓の外を見つめていた。
遠くから聞こえる異形なる者の咆哮。
物心ついた頃にはその存在を認識していたモノ…虚。
昔からちらほらと見かけていたが、近頃は特に多い気がする。
そして…奴等を退治する存在…死神。
オレンジ頭で単純そうな男と、黒髪で小柄な女。
男の方は友人の兄ということもあり、その存在を知ってはいた。
最近その力を手にしたばかりのにわか死神だ。
けれど女の方は…
今はあまり力を感じないが、彼女は正真正銘死神だろう。
以前に会ったことなどあるはずがないのに、何故か…懐かしい…そんな感情を覚えた。
そんなことを考えていると、ふいに禍々しい力が消え去るのを感じる。
兄か、はたまた死神か…
いずれにせよ虚は倒されたのだろう。
だが、何かがおかしい。
渦巻いていた大きな力は消えたものの、何かまだ嫌な気配が残っている。
それもかなり近い場所だ。
もう新手の虚が現れたのだろうか…
「…」
先程の虚の気配からはそれなりに距離がある。
そこから兄か死神が駆けつけてくるのを待っていては被害が出るかもしれない。
冬雪は小さく息を吐くと、鞄を背負い早足で教室を後にした。


やってきたのは人影のない小さな空き地。
虚は冬雪の姿をとらえると、鋭い爪を振りかざし、ニヤリと笑った。
だが冬雪は少しも動じることはない。
ただ冷静に、それを見つめていた。
それから、ゆっくりと虚に向かって手を翳す。
次の瞬間、辺りは青白い光に包まれた。
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