捧げ物

□いつか来るその時を
1ページ/1ページ

その日、隊首会の場はざわざわと騒がしかった。
本来ならばそれを咎めるべき立場である総隊長までが驚いたようにそれを見つめている。
皆の注目を集めるのは十番隊をまとめる少年が立つべき場所。
だが、今そこにいるのは見知らぬ青年。
…いや、見知らぬということはない。
腰ほどまである銀の髪も、強い意志を宿す翡翠の瞳も。
そこにいるべき少年のそれと同じだ。
「えーっと…もしかしなくても、日番谷隊長…なのかな?」
ざわめく隊長達の中、そう問いかけたのは八番隊隊長京楽春水。
それを合図にするようにその場は静まり返り、誰もが青年の返答を待った。
「…」
青年は困ったように整った顔を顰める。
その姿が尚のことかの少年を思い出させる。
やがて、青年は小さくため息を吐くと、そうだ、と呟いた。
「今朝、目が覚めたらこうなってた…」
青年―十番隊隊長日番谷冬獅郎は、訳が分からないと言った風に再び溜息を吐く。
「十二番隊の仕業かと思ったが…お前も驚いてるってことは違うんだな、涅?」
「何でもかんでも我々のせいにしないでくれたまえヨ。ワタシには興味のないことに割く時間はないんダ」
唯一人為的にこのような事が出来そうな技術開発局が関わっていないとなると、いったい何故こんなことになったのか…
その場にいる誰もが首をかしげるばかりだった。
「…原因はさておき、立派になられましたね。冬獅郎さん」
「うんうん。俺も鼻が高いぞ、冬獅郎!!」
まるで我が子の成長を喜ぶように嬉しそうに言ったのは卯ノ花と浮竹。
他の面々もうんうんと頷いている。
「背だってこんなに伸びて…伸び…て?」
「なんで疑問形なんだよ!!伸びてんだろうがどう見ても!!」
今の日番谷は170に届くか届かないかといったところだろう。
以前に比べれば格段に伸びているのは確かだが、いかんせん、周囲の男たちが皆軒並み180越え…
いくら伸びていようと小さく見えることにかわりはなかった。
「心配するな冬獅郎。きっとまだこれから伸びるさ!!」
「いや、待て日番谷。なにも、背が高いばかりが良いとは限らぬ。小さいほうが小回りも利くし、スピードも速い」
浮竹を押しのけ力説したのは砕蜂だった。
その気迫にやや押されつつも、反論を試みる。
「い、いや、でも白哉も背高いけど早い…」
「奴は奴、お前はお前だ!お前は小さいほうが良い!」
「…私も、兄はそれくらいの方が良いのではないかと思う」
名前を出されたからか、白哉も話へと加わってくる。
「兄は…見上げる姿が愛らしい…」
「…いや、んなこと言われても嬉しくないから」
再びうんうんと頷く隊長達に少々頭痛を感じ、怒鳴る気も失せてきてしまう。
そして、何度目かもわからない盛大なため息をついた。
「まぁまぁ、身長徒然は置いといて、ボクはこっちの方が気になりますわ」
次に歩み寄ってきたのは市丸だった。
「綺麗な銀髪やね。長いと一層綺麗や」
「お前も銀髪だろうが」
「まぁそうなんやけど…ボクのんはこんな風にキラキラしてへんもん」
「そうだね。僕も日番谷君の髪はきれいだと思うよ」
「藍染まで…」
揃いもそろって褒めることしかしない彼らにだんだん居心地が悪くなってくる。
…そういえば、隊首会もまだやっていない。
なんだかいろいろとどうでもよくなってきた…
「大丈夫か日番谷。疲れた顔をしている」
「折角成長したというのにそんな顔をしていてはもったいないよ」
「狛村…東仙…」
「そうだぜ。細かいことなんざ気にしてねぇでオレと死合おうぜ!!」
「…遠慮しておく」
少し気持ちが浮上したかと思えばすぐこれだ…
ここにまともな奴はいないのか…
「そう難しい顔をするでない日番谷。一時的な事じゃろうて、更木の言うとおり細かいことを気にせず楽しむのも良かろう」
「一時的?」
総隊長が言うには、この現象は誰のせいでもなく、あえていうなれば己自身が原因だという。
「外見の方に気を取られてすぐには気付けなんだが…おぬしの霊圧、些か不安定であろう?」
言われてみれば、自分の力がうまく制御できない。
暴走するとか、そんな危険はなさそうだが確かに不安定だ。
「お主、このところより一層修行に励んでおったじゃろう。急激に成長した力に肉体が対応できず、このような現象が起こったのじゃろうて。
二、三日もすれば霊圧も安定し、元の姿に戻るじゃろう」
「…」
元に戻る…その言葉に安心したような、少し残念なような…
とにかく、いまだざわつくその場は総隊長により静められ、ようやく隊首会が行われたのだった。

その後も副隊長連中やら平の隊員たちにまで騒がれたものの、総隊長の言うとおり数日で元の姿へと戻っていた。
その姿で隊首会へと赴くと、彼らは少し残念がっていたが、すぐに穏やかな微笑みを浮かべ、手を差し伸べてくれた。

―いつか、本当に成長する時を楽しみにしている―

そんな言葉と共に…










三万打企画、凜弥様に捧げるもし日番谷隊長が大人の姿になったら…で、周りの反応でした。
成長日番谷は絶対髪伸ばして欲しいという願望。
あと背はそんなに高くならないでほしい…
原因はすっごい適当。
本当は乱菊さん辺りが大騒ぎする展開にしようと思ったんですが、収集つかなくなりそうなのでこの形に落ち着きました。
全体的にセリフが多くて読みにくいですね…スイマセン。

改めまして、リクエストありがとうございました!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ