04/01の日記

16:16
歪トド
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歪/アリならぬ歪トド。
パロディで書き始めたものの疲れちまったのでとりあえず途中までうぷ。
十四松がねこだったらすごく可愛いなと思ったところから始まったパロ。
末松しかいません。












トド松

僕らのトド松


あなたの腕を
足を
首を
声を
僕らにください


あなたを傷つけるだけの世界なら
捨ててしまって


ちぎれた死体は狂気に包まれ穏やかに眠る


さあ
覚めることのない悪夢を

あなたに









外見を気にすることは、一種のマナーであると思う。
身だしなみを整えて清潔感を出すことは、当然であって礼儀である。どれだけ中身がよくたって、誰しも第一印象は見た目なのだから。だからこそトド松は、毎朝鏡で自分の髪をセットすることを習慣としていたし、自分が少しでも可愛らしく見える角度の研究も、表情の作り方でさえも妥協を許さなかった。

ぼんやりと意識を覚醒させたトド松は、目の前の顔を見て不思議に思った。

…アホ毛、一本だったっけな。ていうか、こんなにアホみたいに大口開けてるっけ。

ぴょこんと一本だけ立ったアホ毛はまるでアンテナのようだった。大きく開かれた口は普段から常にアヒル口を意識しているトド松には縁遠いような表情。
いつもと様子の違う自分を見ても、寝起きの脳はぼんやりと霞がかかってしっかりと考えることができない。そういう仕様の鏡なんだろうかと無理やり自分を納得させ、再び眠りの世界へ入ろうとするトド松に、その大口は動いた。

「おはよん、ろく、さんの…ゲッチュートド松!」

口が動……くち?


「えええええええ!!!?!?!」

トド松は叫びながら跳ね起きた。
バクバクと心臓が大きな音をたてているのを感じる。眠気はすっかり吹き飛び、クリアな視界に映るのは鏡ではなく、自分と同じ顔をしたなにか。

背中を冷や汗が伝う。
目の前の人物の顔はトド松とまるっきり同じ造りをしていたが、大きく開かれた口は張り付けられたような笑顔を浮かべたまま動かない。焦点のずれた瞳は、どこを向いているのかも定かではない。黄色のパーカーを着て、半ズボン、足には黄色のスリッパを履いていた。来客用のよくあるやつではない、少し汚れた、黄色。指先は伸ばされたパーカーの袖にすっぽり隠されてしまっている。

「え、え?…いや、あの…え、誰?もしかしてドッペルゲンガー…?」

たしか、ドッペルゲンガー同士が出会ったら死ぬのではなかったか。恐ろしい想像をしてしまったトド松は、静かにドッペルゲンガーもどきから距離をとる。

「ドッペルゲンガーじゃないよ!」

ドッペルゲンガーもどきは笑みを張り付けたまま、ブンブンと袖を横に振った。異様にテンションの高い人である。

折れ曲がったブラインドの隙間から漏れ出すオレンジの光が机に反射して眩しい。ここが塾であることを思い出すと同時に、塾特有の匂いが鼻についた。生まれて二十数年、塾なんて場所とは無縁だったトド松は、その慣れない匂いに眉を顰める。

なんで僕が塾なんて…

「え、あれ……?」

そこでトド松はもう一つ異変に気がついた。

「…あつし君は?」

トド松は、あつしを次の合コンに誘う予定だった。彼の携帯に連絡すれば、快く二つ返事が返ってきたのだが、久しぶりにトド松と普通に飲みたいとのことで、合コンの前に一緒に飲みに行く約束をしていた。あつしは塾のバイトをしているらしく、最後のコマが終わるまで空き教室で待機してくれと言われたのだった。そんなに簡単に部外者を中に入れていいのか疑問に思ったが、あつしは笑って、心配しないでと言っていた。デキる男は職場での信頼もあついらしい。


「アツシクンはいないよ」

静かな声がした。
先程までの騒がしさなど微塵も感じさせない声だった。

「アツシクンはいない」

もう一度、同じ声が繰り返す。
…もう、最後のコマ終わってるはずなんだけどな。

「じゃ、じゃあ僕も帰ります…」

自分が教室を間違えたのだと考えたトド松は、その何かに背を向けて出口へと足を進める。ギクシャクとした動きでドアに手をかけ、よせばいいのに、トド松はそこでチラリと背後へ視線を送った。



「!?!?ウワアアアアア!!!!!!」
「あは、顔がトッティ」


トド松の背後、すぐ後ろにその何かはぴったりとくっついていた。思わず飛び退いたトド松の背がドアへ思い切りぶつかり大きな音をたてる。何の物音も、気配もなかったのに。

「ぼ、ぼぼ僕に何か用ですか……?ていうか本当に誰……?」
「僕は十四松だよ!」
「じゅうしまつ…?」
「よし、トド松。ウサギを追いかけマッスル!」
「は……ウサギ?」

何で突然、ウサギ。

「ウ、ウサギを探してるの…?」
「んーん!僕は探してない!トド松が探すんだよ」

朗らかに言い放った十四松は、口元だけは相変わらず笑みを張り付けているものの、焦点のずれた瞳は少しも笑っていない。
手を伸ばせば届く距離にそんな顔があるのは少し怖い。出来ればもう少し離れてほしいとトド松は思った。

「ひ、人違いじゃない?ぼ、ぼ僕は君のこと知らないし!」

トド松は、目前の十四松は、誰か自分以外のトド松を探しているのだろうと結論を出した。…トド松、なんていう名前がそんなにたくさんいるとも思えないが。

「トド松はトド松だよ」
「だからっ…僕は知らないんだって…!間違えてるんじゃないの…」
「僕はトド松を間違えたりしないよ」
「絶対違うって!!」
「…………………」
「何回も言うけど僕は君のこと知らないし!!そりゃトド松って名前はあんまりいないかもしれないけど…顔も僕達すごく似てるけど…でも、」

勢い付いてトド松は叫んだ。

「君のいうトド松と僕は違うんだってば!」
「………………」

ややあって十四松は頷いた。

「じゃあトド松、ウサギを追いかけよう!」
「!!」

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