□毒舌ガエルの夢
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脳内でカウントされる数字が、自分が消えるまでのものなのだと自覚したところでこの性格は直らなかったし、直そうとも思わなかった。
そもそも、ミーが消えた後にベル先輩がミーを覚えてるとは思わないし(アホだから)少しくらい素直になっても意味はないと思う。
どうしたって覚えていてもらえないなら、意味のない時間を過ごすのはもったいなくて、つまりは、ミーには残された時間をいつも通り過ごすという選択肢しかなかったわけである。


「何でテメェも一緒なんだよ。Sランクくらい王子一人で十分だし」
「それはミーも同じですー。ボスってばー、何でミーと堕王子を…」
「んだとクソガエル!」
「ゲロッ」


いつも通りの軽口と、背中に刺さる慣れた重み。
痛みこそ感じないものの、背中に響く衝撃は常に重たい。
避けようとすれば避けれるそれをわざわざ鳴き声まであげて当たってあげてるのは、少しでもミーの誠意を伝えたいから。
(まあ、そんなこと言ったら本当にサボテンにされそうですー)


あとどれくらいで、なんていう馬鹿な問いかけをするほどこの世界に未練があるわけじゃないけど。

その柔らかなそうな金髪に触れたいと思う程度には、長い前髪に隠された瞳を見つめたいと思う程度には、悪態しかつかないニンマリ顔の口で名前を呼んで欲しいと思う程度には、多分。


「ベル先輩ー」
「あん?」
「……死ね」
「カッチーン」


嘘ならペラペラと滑り落ちるのに、本当のことは何一つ言おうとしないこの口を、ほんの少しだけ憎らしく思った。



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