□ああ、ついでに。
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信じられるわけないだろ。だってお前は。

そう言えば、その背の高い男の眉が少し動いた。いつも笑みを浮かべている口元はキュッと結ばれていて、不本意ながら胸が熱くなった。
掴まれたままの腕が、痛い。


「なんで、お前までそんなこというの、宮城」


ぽつり、ぽつり吐き出された声は存外掠れていて、俺がこの男を傷つけたのだと、改めて実感する。


「仙道…、」
「お前だけは、そんなこと言わないでよ」


くるり、視界がぐらついて男の匂いが濃くなったと思えば、男の腕の中にすっぽりとおさめられていた。
体格差をみれば逃げられないのは明らかだ。ずるい男。


「お前は俺を裏切らないで、俺をおいてかないで、みやぎ」


俺をおいていくのはいつだって、きっとこれからもお前のくせに。ずるい男だ、本当に。




ああ、ついでに。

俺はおまえから離れられないんだ。
それすら知ってるだろうに。

だけど愛と形容する気はない。
俺とおまえはそんなんじゃ到底表せない。


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