□不死鳥と誰かの話
1ページ/1ページ





「…どこに行っちまったんだろうねぃ」



目の前の男はポーカーフェイスを崩さず、だが寂しさの籠る声を出した。





「サッチも、エースも、オヤジも…みんな何処かに行っちまったよい」

「…アンタは?」

「俺はどこにも行けねぇ」




随分と悲しい笑顔を浮かべる男だ。




俺は何も知らないけど。

サッチもエースもオヤジも誰なのか、解らないけど。
ただ、この男がソイツ等を思っていた(いる?)のは解る。



マルコ、と名乗ったこの男は自分は行けないのだという。
寂しそうに、笑う。





「俺以外にも残された奴等がいるんだよい」

「会いたい?」

「会いたい、ねい…」




会って、そして。

護れなくてごめんって、
弱くてごめんって。

それから、
ありがとうって、
もう大丈夫だって。


「俺がしっかりしなけりゃならねぇよい」




…全然大丈夫じゃないくせに。



「アンタは自分の価値を知るべきだ」

「知ってるよい」

「じゃあ理解しなくちゃ駄目だ」

「理解もしてる」

「してない」




馬鹿な男なのかもしれない。マルコは。


アンタが生きたことで、どれほどの人間が救われるのか解らないんだ。





「不死鳥の能力って、」

「あー?」

「すっごい綺麗だな」

「そうかよい」

「うん。だけど、」




「すっごい、可哀想な能力」



.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ