銀魂 腐弐

□狂
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「ひっじっかったー!」


「おわっ!!」


「ッチ、避けてんじゃねェよ」


「ちょ、今思いきり舌打ちしやがったかオィィ!!?や、避けるよね?普通バズーカ打ってきたら避けるよねェェ!!?」


「土方さん、腹へりやした」


「切り替え早くね?何?奢れって言ってんの?」


「団子でいいですぜ。さ、行きやしょう」


「ったくよ…」


「おばちゃーん!いつものセット下せェ」


「よく食うなーオイ。それ一本貰うぞ」


「どーぞ。…あり?」


「どうした」


「土方さん、マヨは?」


「あ?」


「マヨ。今日は犬の餌になってねぇ」


「んなもんさっき全部ぶっ飛んだわ」


「そりゃお気の毒に。…ぷっ」


「今笑ったかコノヤロー。おかげさまでタバコまで吸えねーんだぞ」


「それくれェにしときなせェ。死にやすよ」


「…だよなあ。そろそろタバコもマヨも止めっかなあ…」


「…アンタがそんな事言うなんてねィ。明日は吹雪でさァ」


「何言ってんだ、明日も快晴だよ。…もう食い終わったよな」


「あ、ちょ待って下せェ。今レシート…」


「ほらよ。1690円」


「…え?」


「あ?」


「……何で、値段知ってるんですかイ、しかも正確に」


「んなの、いつも奢ってやってんだろ?」


「な…に、言って…俺ァここアンタとくんのは初めて…」


「アンタ、ね…」


「何言ってんでさァ、ひじか…いっ…!」


「どうした?」


「っ…、頭、いた…」



頭が痛い。
そう言って、沖田くんは静かに崩れ落ちた――。



***



「ここにいたんですか、旦那」
「今日は遅かったなジミー」


申し訳なさそうに沖田くんを探しに来る、監察。
沖田くんは意識を失ってこそいるものの、うわ言のように土方さん、土方さんと繰り返している。
ジミーは沖田くんをおぶりながら、今にも泣きそうな声でごめんなさいと呟いた。


「別にいーさ。…それよか真選組は平気なのか?」
「まだ、どうも慣れなくて駄目ですね…。今までずっと副長に頼りっぱなしでしたから」



土方は、死んだ。
討ち入りの最中、それも沖田くんの目の前で。
沖田くんは、泣いて声が嗄れるまで叫んで、多分壊れてしまったんだと思う。
翌朝、俺を見て『土方さん』と笑った。


「…沖田くん、は?」
「医者は…治るのなんて期待出来ないって。精神的なショックが大きすぎたんだろうって…」
「…そうか」


今度は完全に涙声で、ごめんなさいと言われた。
別にジミーが悪いわけじゃねぇし、謝る必要なんてないと思ったけど、言葉には出来なかった。


なァ、沖田くん。
この団子屋、土方と来たときはないかもしんねぇけど、俺とは何回も一緒に来たんだぜ?知ってた?
その度いつものメニューで奢ってやってたんだぜ?
マヨもタバコも吸わねーよ、だって俺は、『土方十四郎』じゃねェから。


沖田くんの前では土方でいると決めたけど。
やっぱ俺は『坂田銀時』だから、ちょっと辛い。


「旦那は…、いいんですか?」


俺の心の内を見透かしたようにジミーが問うてくる。
やだよ、嫌に決まってる。俺は坂田銀時で、坂田銀時として沖田くんが好きだから、やだ、嫌だ、土方じゃない、違う、土方じゃ……



「ひ…じ、方さん…」
「「!!?」」


小さく小さく聞こえた沖田くんのアイツを呼ぶ声。
おそらく寝言だろうその声を聞いたら、何か全部どうでもよくなった。
もう、いい。いいや。
俺はもうお前の前で絶対に『坂田銀時』にならねェ。
お前が息を止めるその日まで、ずっと『土方十四郎』としてお前の側に生き続けてやるから。


「土方さ…」
「…愛してるよ、総悟」


呟いた先、山崎の涙が見えた。






(チクリと痛んだ心には)
(見ないフリして蓋をしよう)




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