銀魂 腐弐

□雨が降ると。
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「あ、」

なんだ、今日はやけにダルいと思ったら。

雨が降ってやがる。




雨が降ると。




ざあざあ。
耳元がうるさい。


さっきまでの熱すぎる程の鼓動はどこへ消え去ったのか、容赦なく降り頻る雨に体をぶるり、震わせる。
雨独特の匂いが鼻につく。



「…雨知ってたんならもっと早く帰せっての」


意地悪な片目の色男にぽつり、一人毒を吐く。
知ってたところで自分が帰って来たかはまた別の話だが。



真選組と鬼兵隊が敵対してるのは当たり前の事だ。
気にくわないのは、何故その当たり前に俺達はなってしまったのか、それだけ。

情事後の気怠い体で誰に言うでもなく呟けば、当たり前のように微笑むのだ。



『それならテメエが鬼兵隊に来ればいい』



煙管を吹かしながら優しく頭を撫でてくれるその手が好きだ。
断れる筈がない。
自分が真選組を裏切るのはあとどれくらい先の事なのやら。


後ろめたさがないわけじゃない。

大好きな近藤さんを裏切る行為は刀で心臓を貫かれたそれと同等の行為だ。ただ、それを上回る大きさであの異様な雰囲気に惹かれている。
それだけの事なのだ。



「…すいやせんね、近藤、さん」


頬を伝う滴は雨に交えて消えた。

もう、迷いはない。
…否、なかった。




「総悟っ!!」
「!」


あの、黒髪を見るまでは。


バシャバシャと音を経て走ってくる見慣れた黒い固まり。それが土方さんだと気付くのに、そう時間はかからなかった。


「土方…」
「テメエこんな所で何やってんだ、傘も差さずに…」
「アンタも差してねぇでしょ」
「いいんだよ俺は」
「意味わかんねぇ」


雨でビショビショになった俺の頭をくしゃり撫でる。
あの大好きな手とは違う優しさがふわり広がる。

…嗚呼、嫌なタイミング。
なんたってこんな時にアンタが出てくるんだ。





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