銀魂 腐弐

□俺の全ては君の為
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「別れてくだせェ」


静かな声でコイツは言った。
俯いたままの総悟を見て、ああ、やっぱりなと思ってしまった。
特にそんな素振りがあったわけでもないけど、なんとなくそんな気がしていたのだ。
こう言ってはおかしな話だが、いつ言われるのだろうとぼんやり考えてしまう位には。
だから対して驚きはしなかったのだけど、一つだけ。


「何で、泣くんだ」


別れてほしいと、そう言ったのはコイツなのに、その大きな瞳いっぱいに涙を溜めて。
これでもかというほど唇を噛み締めてるのは、手を握り締めているのは、震える声を隠すためで、涙を零すまいと必死だからなんだろう。

俺の問いかけに総悟は何かが吹っ切れたようで、たくさんの涙を隠そうともせずに独り言のように、辛いのだと言った。
辛いのなら何故別れるんだと尋ねれば、別れる事がつらいんじゃない、そうじゃないんだと首を横に振った。
じゃあ何が、尋ねる前に総悟は言葉を紡いだ。


「アンタの気持ちは、はなっから俺になんてねェくせに」


そう言って泣いた。
小さな子供のように大きな声で。


アンタは優しいから、俺に付き合ってくれただけなんだ。
アンタは俺が可哀想なガキだから一緒にいるだけなんだ。
アンタは俺に同情しているだけだ。


わんわんわんわん泣いている。
違う、そうじゃないんだとか色々言ってやりたいのにうまく言葉に出来ない。
声がなかなか出せなくて、しかたなく抱き締めてやると弱弱しい手で突っぱねてくる。
同情なんかいらねぇって、虚しくて虚しくて仕方ないんだって。
やっぱり俺は何も言い返すことが出来なかった。
というのも、俺のこの気持ちが同情なのかそうでないのかよく分からないからなのだが。

何だろう。
俺は一度だってこの小さな生き物を可哀想だなどと思っただろうか。
俺が総悟の手を握るとき抱き締めるとき、キスをするとき・・・
何を思ってしていたのだろうか。


「辛いんですよ・・・っ、ねェ、ひじかた・・・!」


総悟は俺の胸に顔をくっつけて泣いても、決して俺の背へ手を回そうとはしない。
それが何故かもどかしくて。
こうして考えるのが面倒になってしまった。


「なァ、総悟」


俺には同情がなんなのかよくわかんねェから、お前が側で俺に答えをくれよ。


「・・・なァ、総悟」


きいてくれよ。
この心臓の音を。

分かってくれよ。
驚きはしなかったけど、別れを告げられたときの恐怖を。

知っててくれよ。
俺の命は何の為にあるんだと思う?


「なァ、総悟」




俺の全ては君の為

(これでも)
(お前は同情だって言うのかよ?)




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