銀魂 腐弐

□全てだった
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悲しいとか、辛いとかじゃなくて、多分寂しかった。
解ってほしかったよ。




「ごめん」
「違いますよ」



欲しいのはそんな言葉じゃない。
そんな顔じゃない。
ねぇ土方さん。


いつ気付いたかはもうあやふやだけど、いや、最初から気付いていたのかも。
俺にとってアンタは全てでアンタがいなくちゃ駄目だったから、いつも目を背けてきただけ。
アンタの中に俺がいない事なんて知ってた。



告白は俺から。
それを受け入れたのはアンタ。
そうでしょう?





「総悟、」
「…馬鹿でさァ」


アンタも、俺も。
アンタは俺なんかに向けた想いなんてこれっぽっちもないくせに。アンタは俺と一緒にいるとき、ただの一度も俺を見ちゃいなかった。
“沖田総悟”を見てはくれなかった。
アンタが俺を見るときの瞳は。
アンタが向ける優しい瞳の先は。




「そう、」
「俺は、姉上じゃない」




確かに聞いた。
土方さんは、寝惚けて俺の名前を“ミツバ”と言ったのだ。一瞬世界が止まったような気がしたのは、それだけ衝撃が大きかったからで、それだけアンタが好きだったから。
大好きなアンタの瞳に、俺は映れない。




「…解ってる」
「解ってねぇよ」
「総悟、」
「名前呼べばいいってもんじゃねぇですぜ」



上手く、笑えているだろうか俺は。
今、アンタの瞳に映る俺はどういう風に映ってるんだろうね。ちゃんと俺として映ってる?
ねぇ、土方さん。ひじかた、さん。



「…でも、ちゃんとお前の事…!」
「土方さん」
「…っ、」
「もう、嫌なんでさ」



頬を伝ったのは生暖かな、一筋の滴。声が震える。


アンタには知っててほしいんだよ。
俺は本当にアンタが好きでどうしようもなかった事とか、アンタしかいないんだよ、ねぇ、土方さん。



「悪い…」
「アンタが、好きだった、んですっ俺は…!」



もう過去形でしかないけど、過去形になんてしたくなかった想いだけど、今だってまだ好きかもしれないけど、だけど、



「もうアンタに笑いかける事なんて出来ない!」



姉上はずっとアンタが好きだった。
アンタもずっと姉上が好きだった。
ほら、そしたらいなくなるべきなのは俺。
俺は姉上の代わりとしてアンタに愛される事なんて出来ない。



「総悟…」
「ごめんなせェ、ごめんなせェ……!!姉上、姉上っ、あねうえ…」
「…ごめん」



謝らないでほしい。
謝らなきゃいけないのは俺なんだから。
土方さんも、姉上もどこまでいっても全ての邪魔でしかないね、俺は。


ごめんね、ごめん。
大好き。ごめんなせェ。
ちゃんと、終えるから。



「ひっ、じかた!…」
「うん」
「…っぅ、大好き、でした…!」
「…うん」



これで最後だから、
土方さん、本当に、





(大好き、でした誰よりも)




アンタを好きな俺にさよなら


この想いは、全部全部、
宝物だよ。
大好きだった、何よりも誰よりも、ねぇ、バイバイ




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