銀魂 腐弐

□背負う覚悟もないくせに
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勢い良く障子を開け放ったくせに、その死んだ魚のような瞳は大して驚きもしなかった。




「なっ…万事屋…!!?」
「よぉ、銀時」
「…高杉」



焦っているのは真選組鬼の副長、土方だけだ。
土方よりも数倍勘のいい銀時の事だ、予想はしていたんだろう。予想していながら何も言わなかったのは果たして。



「何でテメェが此処に…?」
「随分楽しんでじゃねぇか、鬼兵隊の大将と真選組の頭が」
「リスクがでけぇ分楽しみもでけぇだろ?」



土方と銀時の決定的な違いはおそらくここだろう。
同じような獣のくせに、確かに違う獣だから面白い。


土方が本気で焦り始めたのは、銀時にこの関係がバレたからだろう。後は、俺と銀時に繋がりがあったこと。多分土方は後に銀時に問い詰める筈だ。テメェも俺という敵の大将と関係をもってるくせに。
滑稽なこった。



「どういう事だ!!何で此処に万事屋がいる!?」
「そんな野暮なこたァ、聞くもんじゃねぇよ。なあ銀時?」
「…そういうこった」



あくまで冷静を貫くつもりらしい銀時の瞳にはしかし、隠しきれない怒りというか、悲しみのようなものが滲み出ている。
それで隠しきれていると思っているなら検討違いもいいところだ。



「な…、んだ、と?」
「まあ、今日は帰れ。沖田に感づかれる」


銀時と同じく勘の鋭い蘇芳色の瞳を思い出して、嗚呼、アイツも楽しそうだなあ、なんて。
小さく含み笑いをすれば、随分ご立腹な様子の土方は、銀時同様勢い良く障子を開け放ち出ていった。いつになっても短気な野郎だ。




「高杉、」
「んだよ銀時」
「         」





聞き取れないように調節されたその声には聞こえないふりをした。




「堅苦しいのは抜きにして、楽しもうぜ?」
「…ああ」



でもアイツは止めた方がいい、後々面倒くせぇし。
呟いた銀時に薄く笑みを浮かべて、いっそ真選組全員落としてやろうかと言えば、お前にゃ出来ねぇと。
失礼な野郎だ。
だがそんなところがまた良し。
これだから止められねぇ。




己の楽しみの為に、
銀時や土方の痛みには気付いていない事にした。






背負う覚悟もないくせに



『やっぱり俺だけを見てくれねぇのか』

(そうだ、何かあったら)
(躊躇いなくどちらも捨てる)



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