銀魂 腐弐
□sapphire blue
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端から見ればそれは酷く滑稽かもしれない。
けど、俺からしたらそれは酷く幸せな事なのだ。
「土方さん、」
「あー?」
「…死ね」
「んだとこの野郎!!」
一言悪態をつけばぎゃんぎゃん吠える上司は、ただ憎い。土方さんは昔から、俺の大切なもんを全部さらってしまうから。
近藤さんも、姉上も。
更に言うなら、あいつも。
「何が良いんだか…」
「ああ!!?」
「何でもねぇです死ね土方コノヤロー」
「テメェが死ね総悟ォ!!」
相変わらず吠え続ける土方さんを無視して部屋を出れば。
「こんにちは」
「…ザキ。」
人のいい笑顔を浮かべた、柔らかい声。
「副長に報告なんですけど…」
「ああ、部屋にいるぜィ」
「ありがとうございます」
「……何が良いんでィ、あんなニコチン」
小さく呟いたつもりだったが、バッチリ聞こえていたらしい。耳まで赤くしてあたふたしている。
嗚呼、気に食わない。
山崎が土方さんを好きなのは随分前からだ。
どれだけ暴力振るわれようが、罵倒されようが関係ない。あの地味なくせに真っ直ぐな瞳に映っているのは一人だけ。
そしてそれは俺じゃない。
「なっ、ち、違くて……沖田さんっ!!」
「はは、ザキのくせに」
渇いた笑い声は掠れていたかもしれない。
ザキの恋なら相手が誰でも、全力で応援してやる。
何がなんでも叶えてやる。
片想いなんて辛いだけの事はさせねぇ。
きっと、ザキが望めばこの世の全てが味方だと思う。
俺が味方にしてやる。
ザキは幸せになってほしい。
出来れば俺が、その幸せを造ってやりたかったけど。
「まあ、応援、してやるよ」
願い事があるのかい
(悲しくなんてないよ)
(ただ、少しだけ痛い)
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