□土方の病んでる話
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逃げたい。



とにかく、この空間から。



あの人…から。






手には重い手錠。


そばには、古ぼけたテレビが一台。




部屋には鍵がかかっていて、出るなんてまず不可能。





身につけるのが許されているのは俺の血で汚れた青い長袖シャツ一枚。



立って歩き回るのも疲れてきたため、俺は薄汚れたベッドへ腰掛けた。





ガチャ、と扉の開く音。





「ただいま総悟。いい子にしてたか…?」




あいつ…土方さんが帰ってきた。


手に持っている紙袋には、何が入ってるのか想像しなくても分かる。




「総悟…返事は?」




言えるわけがない。



だって俺の口にはガムテープが貼ってある。




「返事はって言ってんだよっ!!!」





頬に凄い衝撃がきて、柱に叩きつけられる。



今日はずいぶんと機嫌が悪いらしい。




「ったく…人は疲れて帰ってきてるのに…。」




ブツブツと悪態をつきながら俺に向き直る。





「なぁ…総悟…。お前は俺を愛してるんだよな…?」




頷かないと、また殴られる。


恐る恐る、ゆっくりと顎を上下に動かすと、土方さんは笑顔になり、いい子だ、と頭を撫でる。



こんな毎日。




もう、嫌だ。







一ヶ月前、俺は土方さんに告白した。



土方さんも俺の事を好いていたらしく、俺たちはすぐに付き合う事になった。



悪夢は、そこから始まった。



俺が、土方さん以外の男と話したり、歩いてたりすると、よく殴られた。



そして、毎日送られてくる100通以上のメールや着信。


「今誰といる?」

「どこにいる?」

「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」





この人は異常だ。


付き合ってみて始めて気づいた。







そんな時、よく励ましてくれたのは旦那だった。



俺の話を聞いて、よく頑張ったね、と言ってくれた人。



他の男は土方さんを恐れて近づかないのに、旦那だけは見捨てないでくれた。




今は、どうしてるのか分からないけど。
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