頂
□らしくない
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今日も、いつも通り仕事に追われて、殺されかけて、また仕事に追われて、そんな風にして終わっていくはずだった。
だけど、今日はなんだかいつもと違ったみたいだ。
トントンというノックの音もなく、静かに扉が開いた。
誰が来たのか、なんて見なくても分かる俺はそのまま仕事を続けながら言った。
「何の用だァ?総悟。」
そう言っても、返事はなかった。
何時もならもうとっくに始まってる俺への攻撃も、殺気もない。
おかしい、そう思って総悟の方に振り向こうとした、その時。
総悟が俺の腰に手を回して抱きついてきた。
いつもはそんなことをしようともしないアイツがこんなことをするなんて、何か悪いことでも考えてるんじゃねぇかって思ったけど、総悟の俺に抱きつく力が割と強くて、すぐにその考えは取り消された。
「どうしたんだ?総悟。」
いつもよりも優しい、ふたりの時にしか話さないトーンで話しかけた。
「…………………なんでも、ないでさァ。」
そう答えた総悟の力がまた少し強くなって、嘘をついてるのがすぐに分かった。
「最近、仕事ばっかであんまり構ってやれなくてごめんな。」
俺がそう言うと総悟が後ろで小さく首を横に振った。
なんだか、そんな総悟を見てるといつもの総悟がうそみたいだった。
「今日、一緒に寝るか。」
そう言うと、また小さく、でも今度は何回も総悟は首を縦に振った。
久々に、ふたりで一緒の布団に寝てみると、やっぱり狭くて、でもその窮屈さに何故か安心した。
ふと腕のなかの総悟を見ると、満足そうに寝てて、思わずぎゅっと抱き締めた。
約四日ぶりのちゃんとした睡眠は、愛する人を腕のなかに抱いて、なんてこんな幸せなことは他に無いんじゃないか…なんて思いながら、俺は深い眠りについた。
end.
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