死ネタ 30題

□05全部過去形になるのが辛い
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多分アンタの泣き顔を見たのはあれが最初だった。
まさか、自分の葬式で空からアンタを見下ろす事になるとは。




死んでも尚幽霊になって一緒にいるなんて嫌だった。
なんか、女々しいじゃないですか。
とっとと行くとこ行って、ゆっくり団子でも食べながら待っている予定だったんだけど。






「      !!!!」






アンタ、泣くから。
これでもかって位声を張り上げて一度だって見たことない顔をするから。




「色男、台無しでィ」

呟いた言葉は届かなかった。




幽霊になって土方さんの側で過ごすようになって、もうすぐ一年になる。
目の下に濃い隈を作って、前より大分やつれたこの人はこの頃随分疲れているようで、死んだように眠る。
感覚は残ってすらないけど、寝ている土方さんの固めの黒髪を撫でるのが好きなのは今も変わらない。



「……そう、ご……」


ぴくり、小さく聞こえた名前に寝顔を覗き込めば頬に一筋。
馬鹿だなあ、もう、一年も経つのに。
悲しそうな切ない声で名前を呼ばれたら、なんだかこっちまで泣きそうになった。





「…もう一年ですよ」


聞こえないとは解っていたけど、思わず一人で呟いた。



だって。ねぇ。
早く俺を忘れて誰かと幸せになればいい。
それか、何事もないように刀を降ればいい。

さっさと幸せになれ馬鹿野郎。





なんて。
思ってたら涙が出てきた。



たくさんぬくもりをもらった。
たくさん光をもらった。
たくさん愛してもらった。
たくさんたくさん幸せだった。


だけどそれは、どんなに頑張っても過去でしかない。
もう俺は、アンタに憎まれ口をたたく事も、柄にもなく甘える事だって出来やしない。
まだアンタに伝えてない事たくさんあるのに。





「ねぇ、愛してたよ」


やっぱり呟いた言葉はアンタに届きはしなかった。






全部過去形になるのが辛い


もう俺はアンタと共に今を生きる事は出来ない


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