死ネタ 30題

□04独りにしないでと死に縋る
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嫌だ。
なんでおいていくんだ、ばかやろう。





「死ぬな」
「…死なねぇよ、馬鹿か」
「死ぬんじゃねぇよっ、ひじかたコノヤロっ…」
「…総悟、」




優しい優しい声。
どっかに飛んでいきそうな弱っちい声。
もうすぐ死んでしまう事なんて明らかじゃねぇか。



泣きたくなってきた。
今まで軽々しく言っていた死ねの一言が実際は酷く重いものだったと知る。






また、俺は独りだ。






「ひじかたっ、土方さ…土方…ひじかたァ…!!」
「…ごめん、総悟」
「…置いてくんじゃねェ!!勝手に逝くんじゃねぇよ!!」
「そうご」




喉が乾いて、からからで。
視界が潤んで、ポタポタ土方さんの頬に落ちる。



嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
置いて逝かれるのはもう嫌だ。





「逝かないで…逝かないで下せェよ!!独りはもう嫌だ!!」
「ごめん、な…」




叫んで叫んで、それでも足りないからもっと叫んで。
でも弱々しく謝るコイツの鮮血は止まることをしらなくて。





「嫌だよ…死なないで…、愛してるんでィ!ひじかたさん…」
「…そうご、」





軽く触れた手は氷みてぇに冷たかった。
有り得ない。
生きてる奴の温度じゃない。






「必ず、また…会おうな」






小さく聞こえた呟きを最期に、
この馬鹿は呼吸を止めた。






「土方、土方さひじかた…!!!ひじかたァァァァァ!!」






自分の手に感じる温度は、
自分の涙だけだった。





独りにしないでと死に縋る


また、独り、だ。


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