死ネタ 30題

□06この血の臭いは君のもの
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第三者の目線で見たら、それは酷く滑稽に映ったかもしれない。刀を振るった腕は今までの何よりも重かった。






「…っは、いて…」



右腕や、左足などを染める紅はもはや自分のものなのか、はたまた誰かの返り血なのか。



分かっている事は自分はこうして生き残り、


この一つ目の美しい男は呼吸を止めたということ。




勝ち戦、となるのだろうこの戦いはいらぬ犠牲を生みすぎた。
失ったものが多すぎるのだ。
勝ち戦とは、果たして誰にとっての勝ち戦なのか。





「…テメエも、そうっ、思わねぇか…?」





もう、ぴくりとも動かなくなった高杉に呟く。
勿論返事など帰ってこない。
じわり、広がる紅は自分が斬りつけた傷から溢れ出るものだ。




コイツだけはどうしても俺が斬らなければならなかった。誰が決めたわけではなく、ただ漠然とそれだけを理解していた。


随分昔に絡まってほどけなくなった糸を、ようやっと断ち切る事は出来たものの、その糸を結び直す事は出来ない。




共に戦った記憶があった。
共に助け合った記憶があった。
だからこそ、お互いが許せなかったんだろう。





―――斬りつけた瞬間の高杉が見せた表情は、最初で最期の穏やかな笑顔だった。





この血の臭いは君のもの

(許し合う事は出来なかった)
(でもお前の事が好きだった)


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