死ネタ 30題

□03生きろ。馬鹿
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まず目についたのは、勢いよく飛び散った鮮血。
そして、痛みに歪むアンタの顔。



「…た、か杉」


わかってた。
いつかこんな日がくるのは。覚悟もしてた。
俺達は敵通しだし、いつかは、必ずお互いを斬らなきゃいけない。
頭で理解はしていた。
ただ、心は認めてなかったみたいで。


自分で斬った筈のその体に駆け寄って、思わず抱き寄せていた。


「…たかすぎ」
「…首か、心臓をやれァ…すぐ、に死ねたのに」
「高杉、」


ひゅうひゅうと喉を苦しそうにならして、俺にほんの少し笑う。
…いつだってアンタは狡い。


「…、いっ…」
「たかすぎィ…!」
「泣いて、…のか?」


当たり前じゃないか。
あんなに愛しかったのに、あんなに大切だったのに、
敵通しだからで割りきれる程俺は大人じゃない。



「っぅ、た…かすぎ!!」
「泣……く、な」


段々と高杉の匂いが濃くなって、体も冷たくて、
嗚呼、もう、死ぬのかななんてさ。
ねぇ、高杉。


「嫌でィ…死ぬなっ、何の為に頭も、心臓も…高杉ィ…!!」
「…無茶……言うな」


優しく頭を撫でてくれてほんの少し口角が上がった。
誰もこんな結末を望んだわけじゃない。
高杉、たかすぎ。



「嫌でィっ、嫌で…!!アンタァこんなとこで死ぬタマじゃねぇ、だろ!!」
「…テメエに……斬られて、死ぬ…本望、だよ」



うっすら開かれていた高杉の右目が閉じられる。
やだよ、嘘でしょ、冗談だって笑ってよ。
アンタがいないこんな世界で俺は、何の為に生きればいいの?



「死ぬなっ、死ぬなよ……晋、介っ…!!!」
「……そう、ご…」



最後、唇に降れた高杉の唇は氷のように冷たかった。




生きろ。馬鹿

(俺が愛した、)
(たった一人の)
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