銀魂 腐

□好きじゃねぇしっ
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「好きだ」

唐突に真っ直ぐに言われた言葉に少々目を丸くする。
え?何が?
土方さんは、お気に入りのマヨネーズライターをいじってたから、マヨネーズの事だろう。
ああなんだ、そんなの今更だ。


「言われなくても知ってます」
「だよな……え?」


刀の手入れをしながら答えれば驚いたような、焦ったような上ずった声が返ってきた。
今度は土方さんが目を丸くしている。
この人、自分がマヨ好きな事みんな知らないとでも思ってたんだろうか。
だとしたら、ただの馬鹿としか言いようがない。


「何年一緒にいたと思ってんでィ。そんくれぇ誰でも知ってまさァ」
「まっ、マジでか!!」


何で驚いてんの?
いや、その馬鹿さ加減にこっちがびっくりだわ。

土方さんがマヨラーとかんなこたどうでもいいので、手入れし終えた刀を鞘に収める。
此処にいても暇なので山崎でもいじめてやろうと腰を上げる。

と。

ぐるん、と視界が反転した。
あり?
状況を把握したのは、俺を押し倒したらしい土方さんの声が聞こえてからだった。


「へ…」
「…へ、なんですかィ?」
「………返事は?」


は?
返事?
何が?

何で俺が土方さんのマヨ好きの事について返事?
返事もなにも何も聞かれてねぇけど。
ていうか何で押し倒した?


「返事って…なにが?」
「だから…、好きだって」


意味がわからない。
これはマヨネーズの感想を求められてんのか?
マヨネーズの感想を求める為に俺は押し倒されたのか?
マヨネーズの感想を述べればいいのか?
それで文句ないですか?


「…犬の餌だと思いやす」
「は?」
「程よくかけるなら好きですけど。アンタのは犬の餌」
「…は?」


また意味不明って顔をされた。
いやいや、こっちの台詞なんだけど。
何でコイツ何言ってんのみたいな目で見られてんの?
意味不明なんですけど。


「…お前何言ってんの?」
「は?アンタこそ意味分かんないんですけど」
「わざとか?それとも天然なのか?馬鹿なのか?」
「馬鹿なのはアンタでしょ。アンタのマヨ好きなんてみんな知ってまさァ!」
「…ごめん、そうだよなお前馬鹿だったよな」
「だから馬鹿はアンタっ…」



…気付いてしまった。
あーどうしよう。
何で気付いてしまった俺。


「分かったかよ?」
「あ…アンタ、何で…」


土方さん、起ってる。


「まず、押し倒された状況で何でマヨの話になんだよ。いや、確かに好きだけどね!」
「いやいやいやいや、何、発情期ですか?え、」


え、意味分かんない。
だって俺男だし。
多分、てか絶対土方さんも男…だ、し。
何言ってんだ、あれ、こういうのなんて言うんだっけ、あ、分かったあれだ。


「…ホモ、ですかィ?」
「違ぇよ、お前だから」


言われた瞬間頬に熱が集まったのが分かった。
土方さんが言ってた事が今やっと理解出来ていきなり恥ずかしさが襲う。
あーやべ、絶対今俺変な顔してるやべ。


「ちょ、おま、その顔やめろよバカヤロー。誘ってんのか?」
「はあ?何言って…」
「とりあえず責任はとれよ」


土方さんが、ニヤリと効果音をたてて笑う。
わー悪い顔。


「え、」
「まあ、楽しもうぜ」
「ちょ、やめ…ギャアアア!!」



***



「…アンタ、これれいぷっていうんですぜ、知ってます?」

まだ怠い体を起こして睨みつければ嬉しそうに笑って。

「ん?散々泣いてよがってたのは誰だ?」
「死ねっ土方コノヤロー!!」

恥ずかしくなって中途半端に着ていた隊服をぐるりと体に巻き付ける。
あーもう最悪。
こんな趣味はなかったのに。


「総悟、」
「なに」
「返事は?」
「…死ね」


言いながら軽く土方さんの口にキスをすると、素直じゃねぇなと笑われてしまった。





好きじゃねぇしっ
(ただ、ちょっと)
(側にいたいだけ。)
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