銀魂 腐
□怖いよ
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「おぅ、新八。かき氷買ってきたか?」
「…そんなに食べたらお腹こわしますよ」
襖を開ければ、畳に敷いた布団に大人しく寝ている銀さんがいて安心した。
紅桜の件で負った傷も今のところ順調に回復してるらしい。
「傷、まだ痛みますか?」
「あ?あー、うん。痛い。きっとかき氷食べたら治ると…」
「大丈夫そうですね」
「え…、ちょ酷い、最後まで言わせろよ」
わざとらしく痛い痛いと喚いている銀さんを無視して、桂さんからもらった肉きゅうクッキーを一口食べた。
『銀時は大丈夫か?』
桂さんは紅桜の一件を結構気にやんでいるらしく、この前心配そうにやってきた。
『アイツは昔から無茶ばかりする。今もたいして変わらんな』
呆れたような口調だったけど桂さんが銀さんを心配してるのは明らかで。
確かに、銀さんは度々、このまま死んでしまうんじゃないかってくらい大怪我をする。
何時も何時も、誰かを守る為に剣を振るう銀さんだけど、死ぬのは恐くないのかな。
いや、死ぬのが恐くない人なんていないと思う。
誰かを守る為に自分の命を懸けて剣を振るう銀さんは、いつもの駄目な人じゃなくて、僕が探してる侍の魂なんてものがある気がして、とにかくかっこいい。
…でも。
かっこいいけど、不安ですよ。
あなたがもしも死ぬ事を何も恐れてなかったら、
いつか、僕等をおいて逝ってしまうんじゃないかって。
「おぃ、ぱっつぁん。黙りこくっちゃってどうしたよ?」
「え?」
僕を現実に引き戻した銀さんの声は、何を思ってるか分からない、いつもの口調で。
だからこそ不安なんです。
「銀さん。銀さんは、死ぬのは怖い、ですか?」
「はあ?」
僕の質問にすっとんきょうな声をあげる銀さん。
読んでいたジャンプから顔をあげて、その死んだ魚のような瞳と目線が合う。
「さあな。まあでも、死んでも苺パフェは食べてたいわ」
「…そう、ですか…」
なんだか拍子抜けしてしまった。
とてもこの人らしい答えだ。
死んでも苺パフェが食べたいなんて、そんなだから糖尿病症候群なんだ。
「実は俺糖分足りないと死ぬんだよね。だからさー、俺そろそろ死にそう、みたいなー?」
「勝手に死んで苺パフェ食べてればいいんじゃないですか?」
「ちょ、銀さん傷つくから!!ガラスのハートだから!!取り扱い注意だからね!!?」
***
銀さんと喋っていると、空がだんだんと暗くなり始め、気付けば真っ暗になっていた。
「じゃ、僕はそろそろ自分の部屋行きますね。おやすみなさい銀さん。」
本当はもうちょっと喋ってたかったけど、一応怪我人をずっと起こしておくのもどうかと思う。
今はちょっと我慢して、銀さんの怪我が治ったときにいっぱい喋ろう!!
銀さんに背を向けて襖に手をかける。
「新八、」
「はいっ?」
「そっち向いたまんまでいいから聞いとけ」
完全に自分の部屋行くモードになってたから、いきなり名前を呼ばれて凄くびっくりした。
とりあえず言われた通り、銀さんに背を向けたまま次の言葉を待ってみる。
「俺ァ、死ぬのは怖いよ」
「え?」
「俺が死んだ後、お前が泣き叫ぶ事わかってるから」
ふわり、言われた言葉になんだか目頭が熱くなって、急いで失礼しますっ!って部屋から出た。
後ろからくすくす笑う声が聞こえたから、きっと銀さんにはバレてるんだろうけど。
まったく、何でああかっこいいんだろう。
何でああ優しいんだろう。
死ぬ時でさえ、自分じゃなくて僕の事考えちゃうんだ、この人は。
ずるいです、銀さん。
そんなこと言われたら余計好きになっちゃうじゃないですか。
僕、もう銀さんから離れられませんから。
絶対に死なないで下さいね。
何があっても、僕をおいて逝かないで下さいね。
僕はきっと、
貴方がいないなら、
生きていく事なんて、
出来ないだろうから。
END
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ずっとずっと一緒にいて下さい、愛しい人。
お前は泣き虫だから、
一人になんかできねーな。
貴方と僕の、
絶対とは言い切れない
大切な約束。
要は貴方しか見えてないのです。