銀魂 腐

□望んでいたものは。
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馬鹿だと思う。
我ながらとても、とても。




大切なものは失ってから気付くとはよく聞いたもんだし、

それは自分が一番よく知ってると思ってた。


知ってる気になっていた。




「あ…来てくれたんですね…、旦那」
「…ジミー」


涙目、涙声。
脳内の端っこにかろうじて覚えてるコイツは確か、

何時もアイツの側にいた。



「う、嘘みたいですよね…。まさか……こんなっ…」
「…ああ」


本当、嘘みたいだ。
だってアイツが。


「ゴリラ達は?」
「奥の部屋に…たぶ、もうすぐ来ます…」


言葉の直後、すっと音をたてて奥の障子が開かれる。


涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃの顔を隠そうともせず、ゴリラは真っ直ぐ歩いてきた。



「…っ、よ、万事屋…!!」
「顔、きったねぇよゴリラ」
「っぅ、言われなくたって…知ってるさ…!!」
「沖田くんは…?」
「まだっ、おぐのへやに…っ、ぞ…ご、よんでごなぐちゃ…」
「…俺が行く。」




局長、顔拭いて下さいよ。
副長に笑われますよ。

そういうザキだって、泣いてんじゃねぇか…!!


後ろから聞こえた会話。

それはアイツに届いているんだろうか。








――討ち死に、しました。


電話から聞こえた声は頼りなく震えていた。
それは返事をした俺の声も同様で。


なんで、と聞き返す俺に、
ただ、おそうしききてください。とそれだけ。


今日、来てみたら。
アイツがいない真選組なんて、あってないようなものじゃねぇか。




「…入るぞ、」
「…」
「沖田君…?」


――さすがに葬式では笑わないだろうな、なんて用心してきた俺が馬鹿みたいに、沖田君には何の表情もなかった。


喜びも、悲しみも、怒りすら。



「…もう、時間だよ」
「…」
「沖田君、」


瞬き一つせず、どこか一点をぼんやり見つめて。
あれコイツ、アイツと仲悪かったんじゃなかったっけ、なんて。



「だ、んな…」
「うん?」
「俺、どうしやしょう…」
「何が?」


ゆっくり、焦点があいはじめて俺の方を見て、
その瞳が暗くて。


「俺、ひ…土方さんを殺るのが生き甲斐だったみてぇで…」
「…うん」
「あの人が…いねぇなら、俺が生きてる意味が…ない…っ」


沖田君の頬に伝った涙を見て、
思い知らされる。
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