銀魂 腐

□幸福論
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「もう、十分です。」


アンタにはたくさん幸せをもらったから。
アンタといる事ですら、俺にとっては天国なんじゃないかってくらい幸せだった。


「ごめん、沖田君…!」


繋がれた手から伝わる緩やかな温もり。
アンタの優しさ。
全部が大好きなんです。
大好き、なんですよ。





『半年、持つかどうかでしょう…』

今でもあの日の言葉が頭にこびりついてはなれない。そりゃもう、苦しいくらいに。
もう、刀を持って戦う事はおろか、近藤さんや土方さんの隣に並ぶ事も、刀を持つ事もできないんだと。

最初の頃は、近藤さんも土方さんも、山崎も、みんなが俺の所に来てくれてた。
たわいもない話をして盛り上がって、時には隊士に戦う術を教えて…
でも時が経つにつれて段々と会いに来る人数が減って、気付けば周りは誰もいなくて。

そりゃそうだ、俺の時間は止まっても、みんなの時間は止まるわけじゃない。
みんな変わっていくんだ、俺だけ残して。
俺だけ何も変わらない。


けど。


『何、沖田君また痩せたンじゃね?』

一人だけ何も変わらなかった。

アンタだけは、いくら時が流れても変わらずに会いに来てくれた。
何一つ変わらずに笑ってくれた。
苦しい時は黙って側にいてくれて、
寂しい時はワシャワシャと頭を撫でてくれた。
俺にとって、何よりも幸せだった。





「ごめん、ごめん…ごめんな…!!!」
「何で、謝るんでさ…」

幸せなんだよ。
こうして、最後の瞬間もアンタの腕にいられる事が。
こうしてアンタが、最後まで俺の隣にいてくれる事が。


「旦那、俺は…もういいんですよ」
「沖田君?」
「俺は………ぐっ!!!!」
「沖田君!!!?」




ああ、ほら。
もうがたがきてるんですよ、この身体は。
日に日に酷くなる咳と、貫かれるような胸の痛みと、込み上げてくるこの紅い塊が何よりの証拠でしょう?
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